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 皆さんがよく目にする浮世絵版画は、作者の下絵を、プロの彫り師が彫ったものです。歌麿(注1)の版画の細い線を見て、歌麿は細い線を彫ったと思ってはいけません。優秀な彫り師がこつこつと原画に忠実に木の坂を彫っていったのです。写楽(注2)も春信(注3)も広重(注4)も、みんな原画を描くだけ。それを腕の良い技術者に彫ってもらって、腕のいい人に刷ってもらっていたのです。色のセンスや、場合によっては無色で画面にデコボコをつける版、いわゆるエンボースを入れたりすることもありますが、これは作者の発想です。しかし製作の現場の経験から言うと、まず間違いなく、皆で相談して、いくつか見本をつくったりしながら共同作業で進めていると思われます。

(千住博『美術の核心』文藝春秋)

(注1)歌麿:喜多川歌麿 1753?~1806

(注2)写楽:東洲斎写楽 ?~? 江戸時代

(注3)春信:鈴木春信 1725?~1770

(注4)広重:安藤広重 1797~1858 歌川広重とも言う

1。 (3)本文の内容とあっているものはどれか