昔は秋になると農家は次の年に畑にまく種を作るためにトウモロコシを軒先につり下げていた。しかし現在はほとんどの農家は種会社から種を買っている。その種のほうが自分で作った種よりもっとおいしかったり、病気に強かったり、もっと収穫できるからだ。しかしそれはハイブリッドと呼ばれる子孫ができない種なので、毎年買い続けなければならない。
農家にとって、特に貧しいアジアの国の農家にとって、毎年種を買うのは大変なことだ。フィリピンでは「ハイブリッド種」に反対する農民同士が種の交換を始めた。バングラデシュでは「輸入ハイブリッド種」を買うことが国内の種研究者の反発を招いている。ベトナムからはハイブリッドを使っても収穫量がわずかしか増えず、ハイブリッドは肥料がたくさん必要なので、結局利益はほとんど増えなかったという報告もある。世界のハイブリッド種のほとんどは欧米の会社が所有しているから、貧しい国からますますお金が吸い上げられていく問題もある。
ハイブリッド種が本当にいいのかどうかわからない。いいハイブリッド種もあるだろう。しかしいいとか悪いとかいう問題ではない。種を企業に握られていることこそが問題だ。それも多くの場合、外国の企業に握られているのだ。売ってもらえなくなったり、急に値上がりしたりする恐れはないのだろうか。種から作物ができ、またそこから種ができ、命がつながっていく。これは自然なことだ。無理な話だとは思うが、そうできる良質な種を作ってもらいたいと思う。