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学生のころ、私はよく近所の図書館を利用していた。飲食が禁止され、おしゃべりも できない図書館は、緊張感があったが、気持ちが落ち着く場所だった。静かな環境の中で ゆっくりと本を読んだり、調べ物をしたりすることができた。
働き始めてからは図書館に行く機会はなかったが、先週近くを通ったので、久しぶりに 寄ってみた。すると、そこは全く違う場所になっていた。
まず気づいたのは、音だ。音楽流れているし、おしゃべりをしている人もいる。そして、館内にカフェもできていて、コーヒーを飲みながら本を読んでいる人もいる。本当に驚い いてしまった。
本を借りるとき、係り人に「久しぶりに来たら、ずいぶん変わっていて、びっくりして しまいました」と言うと、「そうなんですよ。ふだんあまり本を読まない人たちにも来てほ しいということで、こんな感じに変えることになったんです。それに、閉館時間を遅くし たので、仕事の帰りに来る方も増えたんですよ。」と話してくれた。
確かに、みんな楽しそうに時間を過ごしていた。こういう図書館なら、それほど本が好 きではない人も来やすくなって、本に興味を持つ人も増えていくだろう。だが、図書館全 体に流れていた、あの落ち着いた静かな空気はなくなってしまった。この図書館にも静か に本を読みたい人のための部屋が用意されているそうだが、私は、やはり図書館と言う場 所は、静かで落ち着いた場所であってほしいと思うのだ。