A
会社の仕事は学校と違い、知識だけでは役に立たず、実際の判断や行動が問題である。だから何ごとも、実際に経鋼しない限り、新しい能力は身につかない。今持っている能力というのはすべて、過去において未経験の仕事に取り組んだ結果、身についたものだ。
したがって、部下や後輩に対しては常に、今までの仕事をだいたいこなせる(注)ようになったなと思ったら、すかさず彼にとっては未経験の仕事を与え、それをやりとげるようバックアップをする必要がある。
(中略)
そして何とか問題を克服したら、必ずほめる。ほめることによって本人も“おれもやれるな”と自信がつき、次はこちらから未経験の仕事を与えなくても、自分で新しい問題を買って出るようになる。そして全力投球でそれと対決し、克服してさらに自信の持てる範囲を広げ、さらに未経験の課題に取り組むという成長循環に入っていく。
B
企業で人材を育てるには、上司が部下の行動のスタイルを理解して指導を行うことが重要だ。これまでは、まずはとにかく経験させ、その過程で試行錯誤しながら進歩していくのがよいと考えられてきたが、最近では事前に情報をインプットした上で経験をしたいというタイプが多い。 このようなタイプには、未経験の仕事をいきなり与えるのではなく、十分に情報を与え全体像をつかませた上で、新しい仕事に取り組ませることが効果的だ。
最近の部下は現状維持でいいと考える人が多いという批判が聞かれるが、彼らの行動のスタイルに合わせて経験を積ませていくことによって視野が広がり、自ら新しいことに取り組もうという姿勢を持つようになるだろう。
(注)こなす:処理する