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日本には昔から「物見遊山」(注1)という言葉がありますが、非日常への憧(あこが)れは観光の一つの本質です。 しかしその一方で、物見遊山だけに頼った観光地はいずれ必ず飽きられてしまうというのも事実です。例えば富士山(ふじさん)を見た外国人が、もう一度富士山だけを見るために訪日してくれるでしょうか?よほど個人的な思い入れでもない限り、そういうケースは稀でしょう。 海外からわざわざやって来た旅行者に日本という場所へのリピーター(注2)となってもらうためには、彼らがまた戻って来たくなる別の工夫が必要です。
どの様なビジネスであったとしても、顧客(=ファン)の存在は決定的な意味を持ちます。そのブランドの価値を認めて、 長期にわたって買い支えてくれる人の存在無しには安定的な収益は望めません。このことは観光地においても事情は同じです。
(中略)
ここで再び、本質的な問いかけが浮かんできます。顧客とリピーターを生みだし、観光・リゾート地として何度も選ばれ続けるためには、一体何が必要なのでしょうか? 本当の意味で旅行者を惹きつけ、その土地のファンとなるのは、名所旧跡のような観光資源だけではありません。 重要なのは自分たちとは異なる豊かな「日常性(ライフス タイル)」です。その土地の人たちが生き生きと暮らしていれば、訪れた人はきっとその理由を見つけたくなる。
風土に根差した生活様式、独自の食文化、季節ごとの行事、その地の環境が育んだ産業――。 二回、三回と足を運べば、その度にまた 違った表情が見えてくる。その深さを知れば、決して飽きることはありません。
(注1)物見遊山:見物して遊びまわること
(注2) リピーター:ここでは、繰り返し訪れる人