以下は、飼っている犬について、ある声優
(注)が語ったことをまとめたコラムである。
職場の同僚の飼っている犬が子犬をたくさん産んだというのを父が聞きつけて、「こいつが一番かわいかった」と勝手に連れてきました。
大学に通いつつ仕事を(41)。ある作品で演じた役名から「直司」と名付けました。日本人の名前で祖父も覚えられると(42)。
僕は末っ子です。直司はわが家では年齢や立場が一番下になるので、自分(43)もう1人いるような感じです。実家にいたときは僕が散歩に連れて行きました。前にも犬を飼っていたのですが、小さかった頃は犬が怖くて、好きになれませんでした。でも直司は自然となついてくれました。
家が好きで、居間によくいます。雪が降った時、好奇心で外で走り回るかと思ったら、気持ちよさそうに舌を出してこたつで寝ていたこともありました。こたつから顔だけ出して寝ている祖父と同じような格好をして。
家を出てからは実家にまめに電話して「直司、元気?」と父や母に(44)。帰省した時は、たわいないことを話しかけますが、愚痴は言いません。言葉の意味はわからないと思うけれど、人が言われて重い言葉は犬もストレスを感じると思うので。
性格はおとなしいけど、メス犬が好き。目を離したすきに、ばっと近所のメス犬の方へ駆け寄っていくことがあります。シェパードの警察犬を演じたことがあるんですけど、その時は直司の様子や鳴き声が参考になりました。そのシェパードもスケベな性格だったものですから。
きれいごとのように単にかわいがるのは嫌いですが、ほっとけない存在です。直司の残りの人生もできるだけ近くに(45)。
(朝日新聞2013年5月23日付夕刊による)
(注)声優:アニメのキャラクターなどの声を演じる俳優