A
現在の若者世代は、「車離れ」などの言葉に象徴されるように消費に対して消極的な世代だととらえられることが多い。高級車やブラント品などかつて若者が憧れたものに見向きもしない若者が増加しているという。要因の一つとしては、収入が尐なく未来に希望が持てないために節約志向の若者が増えていることがあると言われているが、生まれたときから多くのものに囲まれて育ったおかげで、ものそのものに対する欲求が低いことも挙げられよう。
とはいえ、そのような若者たちも全く消費をしないわけではない。彼らは、単なるものだけではなく、人とのつながりや体験を共有するためにお金を使うのだ。

B
若者の消費実態を俯瞰(注1)すると、今の若者は、デフレや流通環境の進化による消費社会の成熟化、情報通信をはじめとする技術進化の恩恵を受けて、バブル期(注2)の若者よりもお金をかけずに多様な商品・サービスを楽しめる環境にある。安価で高品質な商品・サービスがあふれ、娯楽も多様化していることで、選択できる対象も増えている。こういった変化によって、今の若者では消費に対するモノサシが変わり、「クルマ」や「高級ブランド品」といったバブル期の若者の欲していたものへの興味関心が相対的に薄れているのだろう。
つまり、「若者はお金を使わない」わけでなく、お金を使わなくて済むようになり、価値観の変化により欲するものが変わってきている。

(久我尚子『若者は本当にお金がないのか?――統計データが語る意外な真実』による)


(注1)俯瞰する:ここでは、全体を見る。
(注2)バブル期:1980年代後半から1990年代初頭の、日本の景気が非常によかった時期。

1。 (63)現在の若者の商品傾向について、AとBはどのように述べているか。

2。 (64)若者の消費傾向の変化の要因について、AとBが共通して指摘している点は何か。