(2)
井上ひさし
(注1)さんが、「エッセイとはすなわち、自慢話である」といったことを書いて 「いらしたのを、以前読んだことがありますが、私はその文を一読した瞬間、「ああっ!」と 叫んで赤面した
(注2)のでした。
エッセイ=自慢、とはまさにその通り。エッセイを書く仕事をしている私は、心のどこか でそのことを感じつつ、気付かない努力をしていた気がする。しかしそのようにズバリ言 われると、「私は今まで、自慢話によって、口を翻して
(注3)きたのだなあ」ということが、 明確に理解できるのです。
(酒井項子『黒いマナー』による)
(注1) 井上ひさし:日本の小説家
(注2)赤面する:顔が赤くなる
(注3) 口を網する:ここでは、生計を立てる