A
 私たち日本人がこれまで培ってきた日本語を次の世代に伝えていくうえで、国語辞典のデジタル化は避けて通れない課題です。辞書のデジタル化は「電子辞書」という形ですで
に実用化され、多くの人が利用してきました。わからないことばを瞬間に検索できる電子辞書は「データ検索」というコンピューターの強みを生かしたもので、ことばに関する膨大な情報をポケットに入れて持ち歩けるようになりました。
 でも、書籍の大辞林(注1)を手にとって眺めていると、電子辞書では味わうことのできない楽しみがあることに気付かされます。ページをぱらぱらとめくりながら、気になったことばの解説を読むという楽しみ方です。辞書は単にことばを調べるだけでなく、読み物としてもじゅうぶんに楽しめます。

(広瀬則咽仁三省堂2011年11月25日取得による)



B
 最近の電子辞書研究によると、電子辞書を用いた学生は単語にたどり着く時間は早いが第一義の(注2)意味だけを読むことによる誤答率が高まるという。また僕が行った大学生のメデイア行動調査でも印刷辞書と電子辞書は、意外なことにかなりの率で使い分けられている。パソコンとネットを使いこなす理工系学生でも、アンダーラインを引いたり、使いこなすにしたがってカスタマイズできる(注3)印刷辞書の魅力を語っていた。「印刷辞書はマイ・デイクショナリー(注4)になりますから」という発言が象徴的だった。生まれたときからデジタル機器に囲まれて育った今の学生でも、メデイアの本質を見披き使い分けているのである。

(植村八潮三省堂2011年11月25日取得による)


(注1)大辞林:国語辞典の名前
(注2)第一義の:ここでは、一番目に書いてある
(注3)カスタマイズする:ここでは、自分に都合のいい使いができるようにする
(注4)デイクショナリー:辞書

1。 (63)電子辞書の長所について、A とB が共通して述べていることは何か。

2。 (64)印刷された辞書について、A とB はどのように述べているか。