わが国では一般に、日本人が外国語を話せないのは、教育の技術が悪いからだと信じられている。はたしてし(41)。確かに教育にも問題があろう。しかし、たとえばつぎの四点を実行(42)、どんなに「会話」がうまくても、国際的な場所では傾聴(注)されないだろう。
(1) 自分の考えを論理的に表現するし(43)。
(2) 遠慮せず議論に割りこむ (43)。
(3) 地の人とひと味違った発言をするし(43 )。
(4) 五分に一度は聴衆を笑わす(43)。
 この四点は、考えようによっては、外国語を話すよりも難しい。(44) わが国では、語るには情をもってし、つねに控え目で、皆と同じことを行い、 まじめでふざけないことが評価され、美徳とされているからだ。
 こう考えてみると、日本人の外国語下手は、教育技術の問題というよりは、もっと深い文化の問題(45) と思うのである。

(小林善彦 「なぜ下手か日本人の外国語』 1992)年 8月2)1日付朝日新聞タ刊による)


(注) 傾聴: 真剣に聞くこと。

1。 (41)

2。 (42)

3。 (43)

4。 (44)

5。 (45)