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以下は、国立国会図書館についての新聞記事である。
8月上旪、地下1階に用意された大型保温テントに66箱の段ボールが運びこまれた。 に置いた6本のボンベから、濃度60%の二酸化炭素ガス流し込まれた。
段ボールの中身は、個人や団体が所蔵していた1930~40年代の和紙製の書籍や小冊子だ。同図書館資料保存課の中島尚子さんは「室温25度、濃度60%で2週間燻蒸する
(注1)と、成虫はもちろん、目に見えない卵までか駆除できます」と話す。
同図書館の書庫の大半は閉架
(注2)で、見学者以外の一般人は立ち入る機会がない。これまで虫食い被害は数件しかなく、外部からの害虫の侵入はあまり警戒されてこなかったという。
ところが、2006年に館内一斉調査をすると、過去に古書店から購入した和紙の巻物
(注3)2本が、保管ケース内で繁殖した甲虫の一種「シバンムシ」の幼虫に食べられているのが見つかった。
07年には書庫内でカビ発生し、数千冊の本に被害が出た。カビは本そのものを傷めるだけでなく、虫の餌にもなる。
調査の結果、外部から持ち込まれる本や、ホコリに付着した虫やカビが、図書館内で増する可能性があることがわかった。
これまでも、虫が見つかった本を取り出し、化学薬品で駆除してきた。二酸化炭素は人や環境への影響も尐なく、低費用で済む。書庫に入れる前に、段ボールごと一斉駆除できるのが最大のメリットとうい。
同図書館は、こうしたノウハウをホームページや論文で国内外に紹介している。
( 朝日新聞2010年8月17日付く夕刊による)
(注1)燻蒸する:ここでは、ガスや煙で殺菌殺虫を行う
(注2)閉架:利用者に書棚を開放せず、請求に応じて本を取り出して見せるシステム
(注3)巻物:長い紙に書かれて、巻いて保管された昔の書物