(2)
世界の食糧供給の頭打ち
(注1)、かつての日本と同じように、経済成長のために農業を衰退させ、一方では食生活の向上を図るアジアの動きなど、私たちが暮らしている輸入大国の基盤は意外に脆い。
私たちは、①
このへんで食糧の危機管理体制を考えておく必要があるのではないか。危機管理とは、いったんことが起きた時に、生産から流通までをどうするか、前もって体制作りを考えておくことである。②
体制を制度にしておかないと、食料確保のためのある程度強制力を持った政策を実施することなど不可能である。畑にはイモ類を優先的に植えなければならない。個人的に嫌だという人がいても、国民が最小限の栄養をとるために協力してもらう必要がある。この点を制度化しておく方が良いのではないか、ということである。
平和な時には、この制度は眠らせておけばいい。いざという時に
(注2)政府が発動
(注3)するのである。普段は、政府はなるべく食料の生産や流通には介入すべきではない。それぞれの立場の人たちが、自由に活動出来るような環境を整えておく役割だけでいい。しかし何かの時には、食料管理に責任を持つ仕組みに移行するのである。多くの場合は、異常事態が過ぎ去るまでの一時的な措置になるだろう。
(中略)
食糧の危機管理体制とは、非常事態に備えた生産から流通までの仕組み作りである。発動する
(注3)ことがないように祈りながら、制度を検討しておく必要があるのではないか。
(中村靖彦「コンビニ ファミレス 回転寿司」による)
(注1)頭打ち:限界に達して、それ以上に伸びなくなること
(注2)いざという時に:非常事態の起こった時に
(注3)発動する:ここでは、制度を実際に使う