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大学で「よく学び、よく人遊ぶ」ためには、時間の使い方が重要です。「大学生の楽しさ」に目覚めると、本当に忙しくなります。講義だけなら、宿題が出されたり授業中に当てられたりした高校時代のほうが、よほど大変です。大学の講義の多くは、聞いていれば済むし、たまに見を求める教員がいても、受講する前に勉強してこなかったからと責める教員はいませんから、やりすごし(注1)さえすれば終わりです。だから、講義だけ見れば、一定時間教室に「拘束(注2)される」ことを除けば、ほとんど苦痛はありません。しかし、こうして講義をただ聴いているだけ
では、得られることもごく限られます。ときどき「高校時代の授業のほうが充実していた」と考える人がいるのは、そのためです。
しかし、大学で講義している教員は、講義内容よりもはるかにレベルの高い、広い知識を持つているのが普通で、講義ではそのうちの基本的なことだけを伝えているにすぎません。出し惜しみしている(注3)のではなく、学生の理解力と講義時間の制約(注4)によって、そうせざるをえないのです。だから、講義で興味を抱いたり疑問を感じたことがあれば、教員の研究室を訪ねて質問すると、驚くほど豊富な話をしてもらえます。
学生らしい大学生活を送るには、こうした「講義からはみだす時間」も必要ですし、将来の就職活動に備えて、在学中にやっておきたいことのための時間も要ります。
これらを計画的に組み立てれば、無駄も省け、時間的にも気持ちのうえでも「ゆとり」(注6)が生まれます。
(注1) やりすごす : ここでは、ただ時間が過ぎるのを待つ
(注2) 拘束される : ここでは、いなければならない
(注3) 出し憎しみしている : ここでは、伝えることができるのに伝えない
(注4) 制約 : 制限
(注5) そうせばざるをえない : そうするしかない
(注6) ゆとり : 余裕