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 以下は、企業の経営について書かれた文章である。
 いろんな規則や罰則(注1)を作って、社員をがんじがらめにして(注2)ひたすら働かせるというタイプの経営者も、まあ 今時は少ないとは思うが、まだいることはいる。①そういうやり方が間違っていると思うのは、たとえそれで社員の労働 力を物理的に 100パーセント引き出すことができたとしても、そのかわり精神面での労動力を捨てることになるからだ。
 精神面での労働力というのは、たとえば創意工夫する(注3)能力だ。強制的に(注4)仕事をさせるやり方では、人の創意 工夫の能力を引き出すことはできないのだ。人間の心は、自由なときにその本来の能力を発揮する。楽しんで、興味を持って何かをしているとき、人はいろんなアイデアを思いつく。(中略)
 そして、どんな仕事であろうとも、人間のする仕事には、この創意工夫の才能が重要な役割を果たす。一日中、ひたす らネジを締める仕事であっても、だ。どうすれば不良品を減らせるか、どうすれば作業効率(注5)を上げられるか。たとえばQC活動(Quality Control:品質管理のこと)を通して、作業する人が自分たちで②そういうことを積極的に考えるようになるシステムを創り上げたからこそ、日本の製造業は世界一になれたのだ。
 そしてそういう能力を引き出すためには、従業員にとって、そこで働くことが本当の意味で自分のためになるという環 境を作ることが欠かせない。
本人の幸せと会社の業績(注6)が一致すれば、愛社精神なんてものは自然に育つ。強制なんかしなくても、従業員はプ ライドを持って心から会社のために働こうと思う。

(島田紳助『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する一絶対に失敗しないビジネス経営哲学』による)


(注1) 罰則:違反したときに従わなければならない規則
(注2) がんじがらめにする:ここでは、縛る
(注3) 創意工夫する:新しいアイデアを考え出す
(注4) 強制的に:無理やり
(注5) 作業効率:ここでは、作業を進める速度
(注6)業績:仕事の成果

1。 (66)①そういうやり方が間違っていると思うのはなぜか。

2。 (67)②そういうこととは何か。

3。 (68)筆者によると、経営者が社員の能力を引き出すために必要なことは何か。