(2)
 美術館に展示(注1)してあるものに答案は一つもない。その作品をどう観るか はまったくの自由だ。もちろん、その作品を制作したアーティストの意図は存在する。 しかし、それは決してただ一つの答案ではない。作者も考えていなかったような見方、 読み方ができることが芸術作品の魅力 (みりょく ) なのだ。優れた作品は作者の意図を軽 軽々を超えて、観客の心のなかで多様な気づきを生み出していく。多様な解釈(かいし ゃく)ができることは、優れた美術作品の条件だと言ってもいい。
 しかし、日本人は、この「答えがない」ことが苦手なのだ。「美術が難しい」「絵 がわからない」という声を よく聞くのは、多くの日本人が美術や絵の見方に「正確」が あると思っているからである。欧米ではこうした声は聞かれない。「美術は好きじゃな い」「絵には興味ない」という人はいる。しかし、「わからない」もの だと思っている 人はあまりないのではないかと思う。
 ただし、「絵がわからない」と当惑(とうわく) (注記2) 気味につぶやくのは 大人たちだけだ。子供はそんなこ とは言わない。
 美術館で子供たちは、それぞれのや り方で作品を受け止める。 (中略)
 面白いと思えばハマる ( 注記3) 。思わなければ忘 れてしまう。子供たちと美術の最初の出会いはそれでいいのだと思う。

(衰豊『超(集客力)革命―人気美術館が知っているお客の呼び方』による)


(注1) 展示(てんじ)する:並べて見せる
(注2) 当惑(とうわく)気味につぶやく:困ったように小声で言う
(注3) ハマる:ここでは、夢中になる

1。 (63)筆者は、どのような芸術作品が優れていると述べているか。

2。 (64)筆者によると、日本人の大人が美術を難しいと感じるのはなぜか。

3。 (65)子供と美術の出会いについて、筆者はどのように考えているか。