(5) ぼくはいつも思うのだが、
資格にとらえたものをただ単にか描いても、決して絵画にはならない。し視かく覚のかなた(注1)にかくされているものをとらえて、それを画面に定着させたとき、はじめて絵画が誕生する。絵画とは目の前の自然を心のなかに消化し、それをもう一度は吐きだす作業によって生まれるのだ。そうすることによってはじめて
普遍的な
(注2)美の世界が
出現するのだと思う。だから芸術というものは、
理屈(注3)では解決できないものなのだ。理屈をこ超えたところに本当のび美がある。
(石本正『絵をかくよろこび』による)
(注1)かなた:向こう
(注2)普遍的な:広くすべてのものに共通して見られる
(注3)理屈:論理的な説明