(3)転職を考えることがときどきある。とはいっても、①それほど本気ではない。ただ、もし別の仕事を選んでいたら、自分はどんな人生だったのかを想像してしまう。想像するだけでもけっこう楽しい。いまの仕事に大きな不満はないが、そうかといって格別面白いというわけでもない。もしこの仕事をしてみたら、自分はもっと充実するのかも、とついつい考えてしまうのだ。
 まあ、隣のしば芝ふ生はよく見えると言われてしまえばそれまでだが、自分にピッタリの洋服がなかなかないように、誰しも(注1)自分だけの仕事を探しているのだろう。洋服は試着できるが、仕事に関しては、試しにちょっと、というわけにはいかない。もっとも多少働いたとしても、仕事の本質はわからないだろうが。
 昔に比べれば、われわれの職業選択の幅ははるかに拡がっている。だけど……これが②自分の仕事だと胸を張って(注2)言える人は意外と少ないのではないだろうか。
 才能があれば、と思う人がいるかもしれない。子供の頃にあこあこが)れていた野球選手とか、大学時代に憧れた映画監督になっていたら、たしかに楽しいだろう。でも、現在、私が思うのは、そんなあこが憧れの世界ではない。たとえ平凡へいぼん)な才能でも、自分にピッタリの仕事を探せればよいと思っている。誰しも、自由な職業選択における自分だけの“必然”(注3)を求めているのではないだろうか。

(梅崎修『マンガに教わる仕事学』による)

(注1)誰しも:誰でも
(注2)胸を張って:自信を持って
(注3)必然:そうなって当然のこと

1。 (66)①それほど本気ではない理由として、本文から考えられることはどれか。

2。 (67)②自分の仕事とはどのような仕事か。

3。 (68)この文章で筆者が言いたいことは何か。