(2)
 若いときは二度ないと言う。だから、若い時代を大事にせよ、といった意味である。
 なるほど、その通りである。だが、皮肉屋の私は、このことばに反論したい。たしかに若いときは一度しかないが、中年だって、老年だって一度しかないのである。われわれは若い時代を大事にすべきであるが、同様に中年を大事にすべきであるし、老年を大事にしなければならない。①若い時代だけを特別視する必要はないのである。
 私自身は先ごろ、五十三歳になった。昔の呼称だと、もう立派な“老年”である。だから、ひがんで言っているのではない。私は、老年には老年のよさがあると思っている。(中略)人生のそれぞれの段階には、それぞれに違った②人生のこくがある。私はそう思っている。私達はそれぞれの段階に特有な人生の喜びと悲しみを味わいながら生きたい。
 にもかかわらず、どうして若い時代だけが特別視されるのか!?私には不思議である。思うに、人々は若い時代を準備段階と考えているようだ。若いときにしっかりと学問や体験の蓄積をしておかないと、後になって困る。だから、若いうちから遊びほうけていてはいけない。と、結局は、若者に自制と禁欲を呼びかけているのである。
 でも、私は、③それは間違いだと思う。若い時代に、若い時代に特有の人生の喜び・悲しみを体験しておかないと、中年や老年になって、その段階での人生の喜び・悲しみが味わえない。若者はそのことを明記すべきだある。

1。 (63)①若い時代だけを特別視する必要はないとあるが、それはなぜか。

2。 (64)②人生のこくとは、ここではどのようなことか。

3。 (65)③それは間違いだと思うとあるが、何が間違いであると思うのか。 1. 若いうちから遊びほうけること