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イジメの問題は、おそらく現代の教育の最大の問題であって、「落ちこぼれ」や「暴力」と重なることもあるにしても、それ以上に和音愛な問題としてある。イジメは昔からあったにしても、学校社会と子ども社会が二重であったころには、先生に受け入れられる子が仲間からいじめられたりして、それなりのバランスがあった。このごろではイジメラレっ子は、学校社会からのハミダシであって、先生のほうが内心で暗黙
(注1)の了解をしているケースがよくある。「いじめられる側にもそれだけの理由がある」との言が、しばしば教師から語られることは、その背景で理解すべきだろう。
これは、おとなの社会の反映、もしくは先どりとしてある。これからの社会で、ハミダシをいじめることが途めば、学校以上に陰惨な
(注2)人間社会が生まれるだろう。 この意味でも、イジメの問題は現代の教育にとって重要性を持っている。
(森 遂 『「生きていくのはアンタ自身よ」 PHP 研究所)
(注1) 暗黙:考えを表に出さないこと
(注2) 陰惨な:暗くて悲惨な