(2)阪神(はんしん)淡路大震災(あわじだいしんさい)(注1)のとき、被災(ひさい)した人が最も困ったことは、①ライフライン(電気・水・ガス)が寸断(すんだん)され、たとえ家の破壊(はかい)(まぬが)れても日々の生活ができなくなったことです。その理由は、電気は電力会社に、水は自治体に、ガスはガス会社にと、私たちが命綱(いのちづな)(注2)を「お任せ」する体質になってしまっているためです。()()えると、ライフラインを大型化・集中化・一様化のシステムに組み込まれてしまったのです。そのシステムは効率的ですが、②急所をやられると全てが止まってしまい、被害が拡大することを示しています。
 「文明が進化するとともに災害も進化する」例といえるでしょう。③各家庭あるいは地域レベルでライフラインを確保することの重要さを、あの大震災が教えているのです。つまり、文明化した社会は、むしろ小型化・分散化・多様化した技術えと転換しないと実に脆弱(ぜいじゃく)(注3)なのです。それら一つ一つは非効率のように見えますが、小回(こまわ)りが聞き(注4)(緊急の場合に好都合(こうつごう))、複数の技術を組み合わせるとそれぞれの長所・短所が(おぎな)()えるという良さがあります。

(池内了『ヤバンな科学』晶文社)

(注1)阪神(はんしん)淡路大震災(あわじだいしんさい):1995年1月17日に起きた地震。兵庫県、大阪府、京都府の各地で死者6300人の大きな被害を出した。
(注2)命綱(いのちづな):生命や生活を支えるために大切なもの
(注3)脆弱(ぜいじゃく):壊れやすくて弱いこと
(注4)小回(こまわ)りが利く:その場にあわせて使えること

1。 (63)大震災(だいしんさい)で「①ライフライン(電気・水・ガス)が寸断(すんだん)され」たときに明らかになった問題点は何だと言っているか。

2。 (64)「②急所をやられると全てが止まってしまい」とあるが、どんな意味か。

3。 (65)「③各家庭あるいは地域レベルでライフラインを確保することの重要さを、あの大震災が教えているのです」とはどんな意味か。