(2)ぼくは、子供の頃から、たいへん、ひとみしりをする
質(注1)で、ひと前に出るよりは、ひとりきりで
(注2)いた方がいい。学校の教室などでも、ハイ、ハイ、と手を上げて、われ先に
(注3)自分の意見を言える子どもたちを見ても、ぼくにはとてもあんなふうには
真似 ができない。だから、自分のことを、なかなか他人に伝えたり、わかってもらえなくて、悲しい思いや、傷ついたりするこ も多く、ああ、なんてぼくはそんな性質に生まれついたんだろう、と
我 が
身が
腹立たしく、くやしく思ったことも一度ならずあった。
(大林宣彦『きみが、そこにいる』PHP研究所)
(注1)
質:性質、性格
(注2)ひとりっきり:ひとりだけで
(注3)われ先:ほかの人より自分が先になって