(前略)鏡を見ると自分の顔があり、その顔がじ。とこちらを見ている。それがどうも嫌だ。(中略)
考えたら変なことで、鏡の自分にじっと見られるということは、それをじっと見ているということでもある。だから見ると見られるということは等価な(注)はずなのに、見られているということの方に強く迫られてしまうのだ。
たんに気が弱いということかもしれないが、どうも鏡に映る自分というのは、自分であっても他人なのではないかと思う。だから鏡に対面するのが嫌で、どうも鏡面には自と他の境界線があるらしいのだ。

(赤瀬川原平『目玉の学校』ちくまプリマー新書による)

(注)等価な:価値が同じである

1。 (47)筆者が鏡の自分を見るのが嫌なのはなぜか。