帰国早々にテレビで聴いた一言が、その後も私の胸に鋭く突き刺さっている。内定をもらえなかった女子学生の、なぜ落とされたのかわかりません、という言葉だ。それでいくつかの会社の採用不可の通知を集めてもらって読んだのだが、そろいもそろって偽善的な文章で、最後は白々しく、あなたの幸運を願っています、なんていう一句で終わっている。これでは、なぜ落とされたのかわからない、と嘆くのも当然だ。

(塩野七生「日本人へ・93内定がもらえないでいるあなたに」
『文藝春秋』平成23年2月号による)

1。 (46)何が当然なのか。