A
「目は口ほどにものを言う」ということわざがあるように、人間どうしのコミュニヶーションにおいては、目と目を合わせることが重要です。「アイコンタクト」が、お互いの存在を認め合っているというシグナルになっているのです。相手が目を合わせようとしない場合、自分のことを嫌っているのではないか、何か怒っているのではないかと心配になります。アイコンタクトを通して、私たちはお互いの存在を確認し、是認しているのです。
新生児と母親とのコミュニケーションにおいても、アイコンタクトは重要です。新生児は、生後すぐに母親が見つめて微笑みかけると、微笑みかえすことが知られています。もちろん、まだ日ははっきりとは見えていないわけですが、そこには緩いかたちでのアイコンタクトが成立しているのです。
(茂木健一郎『「脳」整理法』ちくま新書による)B
私たちの周りでは、よく次のような光景が見られる。
待ち合わせに遅れてきた女が男にこういう。「ごめん。怒ってる?」
男は「怒った」といいながら目が笑っている。こういう場面は、怒っていない。
逆に、「怒っていない」といいながら、目が怒っている場合がある。こちらの場
合は怒っている。
目は口よりも雄弁に語っている。
語るのは、日だけではない。態度も同じだ。
頬杖をついている男がいる。隣にいる女が「真面目に関いているの?」と訊く。男は「ああ、聞いているよ」と答える。実際は聞いていない。心ここにあらずである。
こういう場面に遭遇すると、言葉はまったく当てにならない、と私たちは思う。(鮨内一郎 『人は見た目が9割』新潮新書による)