人生が思うようにならないとき、私たちは、その責任を押しつけられる対象を探してしまう傾向があります。親をはじめとする周囲の人間、家庭環境、学校、会社、時代、世の中、運、学歴、容姿・・・・・・それらが今の自分の不幸感に関わりがあったとしても、原因の一つにすぎないのに、すべてであるかのように思いたがるのです。
 自分の能力の限界や内面の問題を認めれば、自尊心が傷つきます。問題を直視し、改善すべく努力するのはつらい作業ですし、その努力がなかなか実らなければ、さらに傷つく。それを無意識のうちに避けようとして、自分以外の誰かや今さら自分では変えようのない何かのせいにしてしまうのでしょう。
 不幸の原因を自分以外に求め、責任を押しつけることと同様に危険なのが、自己憐憫れんびん)にとらわれることです。「私ってかわいそう」という思いにとらわれると、心のアンテナが内向きになります。そうして自分の苦悩にばかりアンテナを向けていると、どんどん視野が狭くなり、客観性も失われていく。自分が誰よりも不幸に思えてきて、周囲の人が抱えている痛みには鈍感になり、①人間関係にも悪影響を及ぼしてしまいかねません

(加賀乙彦「不幸な国の幸福論」集英社)

1。 (1)①人間関係にも悪影響を及ほしてしまいかねませんとあるが、何をすることが悪影響を及ほしてしまいかねないのか。