いま、婦人雑誌で女性がいちばん心をときめかせるのは、ファッションでも料理でもなく、インテリアのページだという。日本人も衣食足って、住といういちばんコストのかかる消費財にまで、手を仲ばしはじめたということなのだろうか。食べものなら、胸がむかつくほどにあふれている。タンスの中だってそでも通さない洋服で満杯だ。あと足りないのは、暮らしを入れるハコー絵に描いたようなマイホームだけである。
 もちろん、(中略)住宅に投資できる人とできない人とは、所得階層によってはっきり分かれてくる。しかし、①インテリアは違う。家具や照明のように固定したものだけでなく、カーテン、カーベット、ルームアクセサリー、そしてプラント(観葉植物)のような可動的な室内装飾品は、ハコよりも安価に、ハコが果たすはずの夢をかなえてくれる。

(上野千鶴子「増補<私>探しゲーム」筑摩書房)