かって私たちを規制したのは、国家思想とかイエの家父長(かふちょう)制度というような、はっきりと目にみえる権力とか規制やモラルであったが、今私たちを支配しているのは、そのようなはっきりと目にみえるものではない。個人主義という美名の裏で、情報という「見えざる手」が大きな手を広げているのである。情報が電波に乗り、活字に現れ、それによって私たちは動かされている。そして、自分がどこまで動かされているのかすら、自分で確かめられないほどである。だとすると、現代ほど自分の主体性、価値観を築き上げるのに難しい時代はないのである。

(町沢静夫「成熟できない若者たち講談社)

1。 (1)この文章の内容として最も適切なものはどれか。