最近、青山通り
(注1)でやたら女性ドライバーをが目立つ。結構若い女の子が、外車
(注2)を乗りまわしているのだ。
最近の傾としてッ愛しツ「も一、当と一緒にるのなをカきちゃらて」飽きちゃって最近の傾向として、可愛い女の子ほど二人連れだ。
「も一、男と一緒にいるのなんかを飽きちゃって・・・・・・・」
という
風情(注3)が憎たらしい。長い髪の毛なんかサラッとしちゃって。やや
顎を上向き加減にレてハンドルを握っているのだ。私はそういう光景を目にするたびに、いつもタクシーの中でひとりつぶやく。
「どうやったら、あんなふうに、お気楽でいられるのかしらん」
綺麗な格好で外車に乗っているのが羨ましいのではない。想像力が全く
欠如している
(注4)ことに私は感嘆している
(注5)のだ。
青山通りを曲がって、路地に入ったところで子どもがとび出してくるとは、どうして考えないのだろう。そして、その子どもをひいちゃうということが、チラッとでも頭をかすめないのかしらん。
自分たちは永遠に、こうして楽しくドライビングできると思っている。その精神がすごい。私なんか教養と自己分析ゆえの、①
規像力が異常に発達してるから、とてもこんなことはできませんわ。
事故が起きたら、たちまち
地獄よね。病院に行って泣いておわびをする。万が一、子どもが亡くなったりしたら、どうなる!? お葬式に焼香に行くとする。すると、四方から鋭く冷たい視線がとびかう。女がとび出してきて、むしゃぶりつく
(注6)。「あの子を返してちょうだい! 返してよお!!」
おお、嫌だ。ぶるぶる。そういうことを考えると、女子大生雑誌の「初めての車」特集に②
空恐ろしいものを感じてしまう、今日この頃の私なのである。
しかし、こういうことを言うと、たいていの人は言うのだ。
「そんなこと、いちいち考えたら、なんにもできないじゃないですか。子どもをひくなんて、よっぽど運が悪くて、めったに無いことなんだから、ふつうの人は考えませんよ」
③
果してそうであろうか。私はそういらのボディコン娘
(注7)に一度開いてみたい。「あんたたち、今の状態が永遠に続くと思ってるの? 何か大きなアクシデントが起こるとは考えたりしないの?」
しかし、こんなこと言っても無駄ふしら。
年増のとりこし苦労
(注9)と思われるかしらん。若いというのはそれだけで
傲慢(注10)なものだ。自分にだけは不幸が訪れないと過信している、だからいろいろ本胆なこともできるわけですがね自分にだけは不幸が訪れないと過信している。だからいろいろ本胆なこともできるわけですがね。
(林真理子「女のことわざ辞典ー講談社)
(注1)青山通り:東京の中心部にあり、しゃれた店などが多い通り
(注2)外車:外国製の自動車
(注3)
風情:様子
(注4)
欠如する:欠ける
(注5)感喫する:すばらしいと驚く
(注6)むしゃぶりつく:激しく強く取り付く
(注7)ボディコン娘:体の線を強調した服を着た若い女性
(注8)
年増:少し年を取った女性
(注9)とりこし苦労:不要な心配
(注10)
傲慢(な):自分は偉い、自分はすごいと思い上がっているようす