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 仕事柄(注1)、私は取材を受けることが多いが、あるとき取材をしている人から、話すのが苦手だと打ち明けられたことがある。取材中は自然な感じで会話が進んでいたこともあって少し驚いたが、そう言われてみるとたしかに少し緊張しているように見えなくもない。ただ、取材を受けている私の立場からすると、必ずしも悪い印象は受けなかった。
 むしろ緊張感が相手に対する配慮のように感じられて、良い感じで話をすることができた。私たちは、あることが苦手だと思うと、うまくできていないように思える面に目を向けてしまう。 スムーズに言葉が出てこなかったことや、話が行きつ戻りつしてしまったことなどが気になって、自分を責める気持ちになる。
 しかし、スムーズに言葉が出なかったことで、会話にため(注2)が出てきていることもある。相手は、その時間的すきまの時に、考えをまとめたり、振り返りをしたりできたりする。トントン拍子に(注3)会話が進まないことで、話している内容を多面的に考えることができたりもする。
 思うように会話できないときは、失敗ではなく、話を深めるように無意識に心が手助けしているようにも思える。 (中略) 失敗のように思えることには、それなりに意味があるのだろう。
 欠点のように思えることも、見方を変えるとじつは長所だということが少なくない。 自分に対して多面的な見方ができると、 気持ちが楽になるし、 本来の力を発揮できるようになる。
(注1)仕事柄: 仕 事の性質上
(注2)ため:ここでは、余裕の時間
(注3) トントン拍子に: 順調に

1。 (51)取材をしている人からうまく言葉が出てこないことについて、筆者はどのように考えているか。

2。 (52)筆者の考えに合うのはどれか。