(3)
 人間の脳の一部に、前頭葉というものがある。
 この前頭葉は、意欲や感情のコントロール、思考や想像のスイッチ機能を果たしていると考えられている。そして、長期記憶を保持する役割も担っている。しかしここが、脳の中で一番早く老化が始まるのだという。
(中略)
 前頭葉の老化に拍車をかけると懸念されているものがある。デジタルだ。(注1)
 人間がパンコンやスマートフォン(注2)、インターネットなどに頼り過ぎるようになったことで、自分の頭の中に情報や知識を蓄積したり、繰り返し引き出す機会が減った。それが前頭葉の老化をいっそう促しているという指摘がある。
 デジタルの中に蓄えられる莫大な情報を、人間に新たに与えられた「外部脳」だと解釈し、これが人間の効率化につながるのだという見解が増えた。外部脳を持てば、自分の脳を記憶装置にせず、思考の場として徹底できる、そう考える専門家も少なくない。
 かし、外部脳に頼ることの代償が前頭葉の老化促進だとすれば、この考えに対しては慎重に対峙(注3)しなければならない。
 自分の脳の中に情報や知識を記憶し、それを駆使してこそ生まれる連想や判断というものがある。これを頻繁に繰り返すことで、人間の脳の潜在力が引き出され、老化も防ぐことができる。外部脳ができたことを謳歌する前に、自分の脳を鍛え、活用することの重要性を再認識する必要がありそうだ。闇雲に(注4)デジタルへ脳の役目を託すことは、危険を伴うと言わざるを得ない。外部脳に人間の脳が持つ元来の力を奪われかねないのだから。
(注1)デジタル: ここでは、デジタル機器
(注2)スマートフォン: パンコンの機能もある携帯電話
(注3)対峙する: 向き合う
(注4) 闇雲に深く考えずに

1。 (55)筆者によると、 デジタルを使うことで前頭葉の老化が進むのはなぜか

2。 (56)この考えとはどのような考えか

3。 (57)筆者が言いたいことは何か