A
 小説を書こうとしている人やすでに何作か書いたことのある人が、よく私にテクニック面での質問をしてくるけれど、そういうとき私は「あなたが技術や手法について誰かに訊く(注1)たびに小説はあなたから離れていく」と答えることにしている。
(中略)
 自分の小説の行き詰まりをテクニック不足が原因だと考える人は「小説の書き方マニュアル」を信じる律儀さ(注2)と同じで、たしかに真面目で素直ないい人ではあるのだろうが、 本当に自分が書きたいことが何なのかをきちんと考えていないという意味で、怠けているということになる。
 小説の中身と表現手法・技術の関係は何重にも畳み込まれた(注3)もので、厳密に論じだしたらキリがない(注4)が、まずはそんな面倒なことは考えずに、「本当に書きたいことだったらテクニックなんか関係ない」と、シンプルに考えてほしい。


B
 小説を書くには想像以上の気力が必要である。書くことを決めて執筆に取りかかっても、自分には技術がないから下手な文章しか書けないと手を止めてしまう人が多い。しかし、そんなことで悩んでいるくらいなら、まずはどんどん書き進めてみるべきだ。テーマとジャンルを決める、構成と展開を考える、登場人物と舞台を決めるといった必要な手順を踏んだら、あとは書き始めること、そして完結させることが何より重要なのだ。
 いくら面白いストーリーでも、完結させないことには小説とはいえない。短編小説でも、納得できる出来栄えでなくてもかまわない。まずは自分の力で一つの作品を書き上げることだ。それができれば、自信が生まれ次の作品につながっていく。
(注1)訊く: ここでは、質問する
(注2)律儀さ: 礼儀正しさ
(注3)何重にも畳み込まれた:ここでは、複雑に絡み合った
(注4)キリがない:際限がない

1。 (60)小説を書くときの問題点として、AとBが共通して挙げていることは何か。

2。 (61)小説を書くために必要なことについて、AとBはどのように述べているか。