(1)
以下は、図書館で司書(注1)が子どもたちに本を読んで聞かせることについて書かれた文章である。
読み聞かせ/u>の時には、まず子どもたちに表紙を見せます。そして、ゆっくりと書名と著者や画家の名前を読み上げます。表紙をめくると、見返し紙が出てきて、それは無地の色紙であったり、または本の中身とかかわる絵があったりするのですが、それもゆっくりと見せます。ここは、その本の中身に入る前の気持ちの準備のためのページなのです。それから扉のページがあって、開けるとその本の世界が広がります。
つまり、すぐに本の中身に飛び込んでゆくのではなく、じっくりと本を見せて、そのお話の世界に子どもたちを案内する。ただ子どもたちがおもしろがればいいのではなく、一人ひとりがその世界に入っていく、そうして自分で何かを感じ取る。それが図書館でのお話し会なのです。
その時、語り手が主役ではありません。著者が読者に伝えたいことを、その代わりにな って伝える仕事ですから、大げさな身振りや声色(注2)よりも、ごく(注3)自然な話し方と、それに伴う控えめな(注4)身振りで、著者の思いを伝えようとします。
(中略)
そこで、司書は、読み聞かせやお話をする前に、その本を何度も読みこんで、この著者が何をいおうとするのかを考え、どこに間を入れたらよいのかを考えます。それから練習に入ります。読み聞かせの場合も、本文をほとんど暗記するほどに読みこむことが必要とされています。子どもと本とを結びつけるのには、そういう配慮(注5)と厳しい訓練が必要なのです。
(注1)司書: 図書館の専門的な仕事をする職員
(注2) 声色: 声の調子
(注3) ごく: 非常に
(注4) 控えめな: 大げさでない
(注5) 配慮: ここでは、気持ち

1。 (57)①読み聞かせ/u>前に、語り手は子どもたちに対してどんな工夫をしているか。

2。 (58)筆者によると、 本を読み聞かせるために語り手はどんな準備をしているか。