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10年近く間、①印象的なテレビのコマーシャル(C.M)があった。ある洗濯洗剤「x」のCMなのだが、洗ったシーツの香りを女性が楽しんでいるだけなのだ。洗濯洗剤を使う目的は汚れを落とすことなのに、そのCMでは香りのことばかり言っていて、汚れをよく落とすことはまったく言っていなかった。この洗剤を作っている会社はどうしてこんな変なCMにしたのだろうかと思ったが、最近ある本を読んで、その理由が分かった。
その本には次のようなことが書かれていた。この会社には昔から汚れをよく落とす洗濯洗剤「A」という人気商品があったが、会社の売り上げをもっと伸ばすために、新しいタイプの洗濯洗剤を作ることにしました。それが「X」だった。「X」は、「A」と値段はあまり変わらないが、汚れを落とすだけでなく香りも楽しめるのが特長だった。
ところが、最初「X」は期待していたようには売れなかった。初めのころに作ったCMでは消費者に「X」の特長がうまく伝わらなかったのだ。そこで、この会社はそれまでのCMを大きく変えて、「この商品を使えば、いい香りが楽しめて、とてもいい気分で洗濯ができる」というメッセージを強く伝えることにした。そうして新しく作られたのが②私が見たCMだったのだ。
そのCMによって、「X」の特長が多くの消費者に伝わったようで、それ以降「X」もよく売れるようになったそうだ。私がちょっと変だと感じたあのCMは、実は十分に宣伝効果があったのだ。