空を飛んでいる虫を食べるのが、コウモリ本来の、ベーシツクな食生活です。
 しかしすべてのコウモリがみんなで虫を食べていたら、しまいにはエサがいなくなってしまい、コウモリそのものも全滅してしまいます。それに、虫の少ない環境に生きるコウモリもいます。ですから空を飛ぶ食虫目の哺乳類ほしゅうるいであるコウモリは、①「食べ分け」をしなければいけなかったのです。
 たとえば、魚だけを食べるウオクイコウモリというのがいます。水面が波打っているのを超音義ちょうおんぱで感知して、その下にいる魚をすくい取つて食べます。花のみつだけを吸うコウモリや、フルーツだけを食べるフルーツパツト、中にはコウモリを食うコウモリもいます。
 そんなバリエーション(※l)のひとつとして、哺乳類や爬虫類はちゅうるいの動物の血を吸うコウモリがいるのです。血を吸う( A )は、もっとも手っ取り早い栄養の摂取せっしゅ方法であることです。つまり動物の血液は栄養に満ちているので、頭から丸ごと食べて消化する手間がかからないのです。栄養を摂取するのに、この上なく効率がいいわけですね。ちなみに彼らは「吸血血液保存袋ほぞんぶくろ]のようなものを持っていて、おなかの減った仲間がいると、おなかいっばいの吸血コウモリがわけてあげることがあります。
 吸血コウモリというと、吸血鬼ドラキュラの手先(※2)とか、伝染病でんせんびょう媒介ばいかいするベクター(媒介者)という悪いイメージから()(きら)われますが、同種間ではそういうやさしい②習性も持っているのです。

(野村潤一郎「サルが食いかけでエサを捨てる理由」 ちくまプリマー新書による)


(※1)パリエーシヨン:いろいろあること
(※2)手先:人の支配を受けて使われる者

1。 (5)ここでの①「食べ分け」の説明として正しいものはどれか

2。 (6)( A )に入る最も適切なものはどれか。

3。 (7)文中の②習性とは、どういうことを指しているか。