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 ネットクーク(注1)につながったコンピュータには「オフライン状態」と「オンライン状態」があります。オフライン状態のコンピュータは、外部と交信(注2)せずに、すでにインプットされている情報やソフトウェアを用いて作業しています。一方、オンラィン状能のコンピュータは、インターネットなどで外部と交信しながら新しい情報やソフトウェアを取り入れながら作業します。人間にもまた、オフライン状態とオンライン状態があるようです。オフライン状態はいわば日常生活で、あまり新しいことを取り入れることはありませんが、オンライン状態では新しい情報を取り入れて、自分の行動や思考を変えていきます。
 ぼくの場合、旅行に出ると自然にオンライン状態になります。いま住んでいる日本にいても当然、オンライン状態になることがありますが、旅に出れば、どちらを向いても新しい情報がたくさんあるので自然にオンラインになるのです。
 動物は皆、本能(注3)にもとづいて習慣的に行動します。人間もまた動物で、強い習慣性があります。そして、習慣的なことに対しては、毎日の生活で疑問に感じることなどありません。しかし旅に出ると、非日常的な環境に放り出されます。そうすると、自分がいままであたりまえにやっていたことに疑問を抱くきっかけが生まれます。
日々、あたりまえのようにやっていたことにも別なやり方があることに気づくのですそれがオフラインからオンラインになることにつながります。旅先でなら、自分とは違うことをしている人を見て、単に「こいつらは変だ」とか「おかしい」と思うのではなく、「この国の人は皆こういうようにやっているようだから、一理ある(注4)んじゃないか」と考えることができ、ひいては(注5)「自分でもやってみようじゃないか」となります。そして、こういった経験を通して自分のそれまでのやり方、人生を考え直すことになるのです。(中略)
 「灯台下暗し」という諺があります。「広辞苑」によると「灯台(燭台)の直下はあかりが暗いように、手近の(注6)事情はかえってわかりにくいものである」とあります。ふだんの環境にあって自分の人生を考え直したり、おさらい(注7)したりしようと思っても、それは難しいのです。だから、ちょっと離れて自分のことを考えるために旅に出るのです。
(注1)ネットワーク:ここでは、インターネットなど
(注2)交信する:通信し合う
(注3)本能:生まれつき持っている性質
(注4)理ある:もっともな理由がある
(注5)ひいては:さらに
(注6)手近の:身近な
(注7)おさらいする:ここでは、振り返る

1。 (67)筆者によると、人間の「オフライン状態」とはどういう状態か。

2。 (68)筆者によると、人間は旅に出るとどうなるか。

3。 (69)旅について、筆者の考えに合うのはどれか。