人はだれも心の中に現実自己と理想自己を持っている。
現実自己(50)、自分自身が捉えている現にあるがままの自分のイメージのことで、理想自己とはあるべき自分のイメージのことだ。
自分は意志が弱い、勉強さが足りない、ユーモアが足りないなどと悩み、自己嫌悪に陥る者は、(51)現実自己と理想自己のギャップに人悩むわけだ。あるべき自分とはあまりにもかけ離れた現実の自分に嫌悪がさすというのは誰にでもあることだ。
きまじめな者は、このギャップがダメ人間の証明であると勘違いしてしまう。それが勘違いであることは、ちょっと冷静に考えてみれば分ることだ。
そもそも何のための理想自己か。現実自己を向上させるために、現実自己より価値の高いところに設定したのが理想自己だろう。(52)、両者にズレがあって当然と言える。現実自己と理想自己が完全に一致し、現実の自分に何の不満もないという者こそ、かえって(53)。現実自己を少しでも向上させるためには、このズレはなくてはならないものなのだ。
それにしても、いつまでたっても現実自己と理想自己のギャップが大きく、一向に縮まる気配がないと悲観する者もあろうが、これも勘違いだ。(54)、理想というのは常に現実の数歩先に設定するものだ。現実自己が前進すれば、その分要求水準が高まり、理想自己も自動的に前進していく。けっして追いつくものではないのだ。
(概本博明『そのままの上自分を活かす心理学』による)