具体的に問題解決をはじめるときに重要なことは、ようするになにをやりたいかという「目的」をはっきりさせることだ。
(中略)
なお、目的を明確化すると言っても、一方で、とても具体的な目的が最初から与えられる場合もある。たとえば、会社の上司から「うまくアイロンをかけられるロボットをつくりなさい」と言われたとしよう。そのときには、その上司の言ったことのほんとうの意図をくむようにしよう。それをしない忠実な①部下は、それではアイロンを握つて、布を適当な力で押しつけることのできるロボツトアームや、布のしわを見つけるロボツトビジヨンの設計に、すぐとりかかるだろう。
しかし、そうではなくて、この上司は「洗濯が終わつたら、できるだけ早く服を着られるようにしたい。そして、その目的の一つの具体的な方法として、アイロンがけロボットをつくれ」と言っているんだな、と考えると、なにもアイロンがけロボットにこだわる必要はなくなる。たとえば、衣料の繊維自体に手を加えて、洗濯してもしわができない繊離にしてしまえば、アイロンがけ自体が不要になる。すでに形状記憶繊維が普及しているから、②のような考え方の有効性はみんなわかっているよね。
(広瀬茂男『ロボツト創造学入門』岩波ジユニア新書による)