短文
(1)
 人間は、目の前のものやできごとを、自分の目だけで見ているとか、感じているとかというように思うかもしれないが、実際には, 頭の中では、同時に記憶の中から同じような情報を引っ張り出して、素早く比較、検討しているのだ。
 つまり、勘がいいとか,察しがいいというのは、目で見たこと、聞いたことだけでものごとを判断しているわけではなく、想像力が発達しているということになる。脳のお記憶をいかにうまく使いこなしているかという差が表れてくるのだ。

(米山公啓 「頭がいい」とはどういうことか にようる)

(46)筆者によると,勘や察しがいいとはどういうことか。

短文
(2)
以下は、ある会社が取り引き先に出したメールである。

(株)中田清掃社

総務課 田山 広 様

 毎度、お引き立ていただきありがとうございます。
 さて、11月5日にご注文いただきました品を、本日、添付の納品明細書通り発送いたしました。
 なお、「床用洗剤スリーン」につきましては,誠に申し訳ございませんが、在庫不足のため、50箱のみの発送とさせていただきました。未発送分は入荷次第(2週間後の予定)発送いたします。本日発送の商品が到着しましたら、大変お手数をおかけいますが、一緒にお送りした品物受取書に押印のうえ、返信用封筒にてお送りくださるようお願い申し上げます。
 添付書類:納品明細書(写し)1通

(株)キイト
営業課長 佐川 明人

(47)このメールの用件は何か。

短文
(3)
 専門家・研究者やマスコミには、ごみの問題や斜面林や里山(注)などの破壊といった身近な環境問題を重視せず、いくつかの代表的な環境問題ばかりを取り扱う傾向が強い。マスコミなどが注目する環境問題に取り込んでいることが、専門家の専門性を誇示し、専門家としてのステースタを維持させることにつながっているかのように見える。環境問題が話題性の高いものに特化されることは、日常的な環境問題が大部分の専門家・研究者から無視され、放置されることになる。

(御代川貴久夫・関啓子「環境教育を学ぶ人のために」による)


(注)里山(さとやま):人家の近くにあって、、人の生活と関係が深い森林や山

(48)筆者は、専門家・研究者の環境問題への取り組みをどのようにとらえているか。

短文
(4)
 人は一人では生きられない。よほどの変人か仙人(注1)のよな人でなければ、人は世の中と無関係には生きられない。しかも, その世の中というものは固定されたものではなく, ものすごい速さで形を変えていて, それにいちいち適応していくのには, 体力も技術も精神力も要る。そんな化け物(注2)のような世の中から自分を守るために, 一人きりで孤高の城に籠城(注3)すれば、やがて孤独に自滅する。その矛盾をどうしていったらいいのだろう。

(山本文緒<結婚願望>による)


(注1)仙人:世の中と離れて生きる神のような人
(注2)化け物:怪物
(注3)孤高の城に籠城する:ここでは, 外部との接触を一切持たずに自分の殻に閉じこもる

(49)この文章で筆者が述べていることは何か。

中文
(1)
以下は, 市民向け講座の講師を務めた大学教員の話である。
 正直なことをいうと、成人した人々の集まりであるNHK 文化センターで, 美術史の話をするのは, 最初はかなり疑わしい気分だった。というのは、多かれ尐なかれ社会に出たり、家庭を持ったりした経験があって、それなりの見識なり専門なりを持ている人々が、いまさら“役にも立たぬ”過去の芸術に、それほど深い興味を持つだるうなどとは思えなかったからである。また、仮に持ったとしても、それは、自分の好みに合った美術品を, 楽しんで眺める、といった種類のものかと思っていた。ところが、それが①大変な間違いだということがわかった。
 ひたひたと押し寄せてくる、にせものでない, 深い興味が近頃の大学生にこそ見つけることのできないものであった。はたちになるやならずの若者たちは, 多くの場合, 単位をとるためにそこにいるのであって、どこまで心からきょうみを抱いてそこにいるのか全く疑わしい。(中略)②市民講座の熱心さは、かつて, 喜びもなく学生時代を過ごしてしまった人々の、いわばノスタルシー(注)の場合なのであるうか。失われて初めて、その喜びを知ったというわけなのか. 私はそう思うようになった。
 ところが、それもまた、間違いだということがわかった。1年と数カ月講座を続けた今は、あることがわかったのである。つまり、芸術は、子供には“わからない”ということである。芸術とは, 人生の経験であり、憧れであり、また失望と悲哀である。一片の絵にも, 人生が詰まっている。人生を生きていないものに、絵がわかるわけがない。もちろん、若者でも、ある程度はわかる。しかし、本当に深くわかるのは、すでに生きた人々である。

(みどり「レット・イット・ビー」による)


(注)ノスタルジー:過ぎた日々を懐かしがること

(50)①大変な間違いだとあるが、何が間違いだったのか。

(51)②市民講座の熱心さとあるが、筆者は講座を受ける人たちが熱心なのはどうしてだと思っていたか。

(52)筆者が市民講座での経験を通して最も強く感じたことは何か

中文
(2)
以下は、国立国会図書館についての新聞記事である。
 8月上旪、地下1階に用意された大型保温テントに66箱の段ボールが運びこまれた。 に置いた6本のボンベから、濃度60%の二酸化炭素ガス流し込まれた。
 段ボールの中身は、個人や団体が所蔵していた1930~40年代の和紙製の書籍や小冊子だ。同図書館資料保存課の中島尚子さんは「室温25度、濃度60%で2週間燻蒸する(注1)と、成虫はもちろん、目に見えない卵までか駆除できます」と話す。
 同図書館の書庫の大半は閉架(注2)で、見学者以外の一般人は立ち入る機会がない。これまで虫食い被害は数件しかなく、外部からの害虫の侵入はあまり警戒されてこなかったという。
 ところが、2006年に館内一斉調査をすると、過去に古書店から購入した和紙の巻物(注3)2本が、保管ケース内で繁殖した甲虫の一種「シバンムシ」の幼虫に食べられているのが見つかった。
 07年には書庫内でカビ発生し、数千冊の本に被害が出た。カビは本そのものを傷めるだけでなく、虫の餌にもなる。
 調査の結果、外部から持ち込まれる本や、ホコリに付着した虫やカビが、図書館内で増する可能性があることがわかった。
 これまでも、虫が見つかった本を取り出し、化学薬品で駆除してきた。二酸化炭素は人や環境への影響も尐なく、低費用で済む。書庫に入れる前に、段ボールごと一斉駆除できるのが最大のメリットとうい。
 同図書館は、こうしたノウハウをホームページや論文で国内外に紹介している。

( 朝日新聞2010年8月17日付く夕刊による)


(注1)燻蒸する:ここでは、ガスや煙で殺菌殺虫を行う
(注2)閉架:利用者に書棚を開放せず、請求に応じて本を取り出して見せるシステム
(注3)巻物:長い紙に書かれて、巻いて保管された昔の書物

(53)この記事によると、国立国会図書館で2010年8月上旪に何が行われたか

(54)この記事によると、国立国会図書館では本が傷んだ原因をどのように考えているか。

(55)国立国会図書館で行われた作業の方法は以前のものとどのように違うか。

中文
(3)
 文章を書こうとすると、私たちの心の闇に一つの言葉が光る。その言葉がおぼろげな(注)内容を象徴していて、そこから次の言葉が生まれる気配が感じられる.紙の上にその言葉を書きとめてみる。その言葉によってはじめて自分が何を書こうとしているかが、わかりはじめるのだ。“①混沌からことばへ”とはこの場面を指している。人間の言葉が本当に生きているのはここである。
 わたちは、ぺンが書いてゆくにつれて考える。“考える”とは、音声にならない言葉をひとりごとのように口の中で言うことだ。その言葉をペンが書き留める。書きとめた言葉がさらに次の思考を呼ぶ。これが文章表現の“現場”だ。
文章を書いた経験をふりかえれば、だれでも思いあたることだが、書き上げた文章は必ず、自分がはじめに漠然と②予感していた内容とは違ったものになっている。心の闇に一つ二つで危うく連れなって光っていた言葉が漠然と象徴していた内容と、複雑な思考を経て言葉の秩序によって組織され他人にも理解されるようになった文章との違いが、そう感じさせるのだ。
 私たちは自分の考えたことを文章に表現しようとすることによって。実際には。考えていた以上のことをその表現された文章の内に発見する。これが文章表現における発見である。書かれた内容(世界)についての発見と、それが自分の中から出てきたという驚き。文章を書くということは、言葉によって、世界を知り自分を知るという二つの驚き。文章を書くということは、言葉によって、世界を知り自分を知るという二つの驚きを同時に経験することでもある。

(梅田卓夫.清水良典.服部左右一.松川由博编『高校生のための文章読本』による)


(注)おぼろげな:はっきりしない

(56)①混沌混沌

(57)書き上げた文章が②予感していた内容とは違ったものになっているのはなぜか。

(58)文章を書くことについて筆者はどのように述べているか。

長文
以上は、筆者が著書の中で「哲学の役割」について書いたものである。

 ここで大切なのは、とりわけ科学の意義と限界をしっかりと見定めて、人間的知の全体をほんとに見渡しうる哲学的知の立場を我がものとすることにある。というのは、科学的知は、二つの限界を持ち、その限界内でしか意義を持たないからである。
 一つには、科学的知は、対象を突き放して、第三者的立場で、自分に関わのない客観的事象として眺め、しかも、必ずそのつど、特定の観点からだけ対象を扱い、自分が関心を持つ側面だけを取 しゃしょうり上げ、それ以外の局面を捨象し(注)、決して対象の全体を見ようとはしないのである。だから、科学が進むと、細分化が必至となり、隣の研究室でやっていることが、お互いにはまったく分からなくなる。専門化と特殊化が、科学の運命であり、いかに学際化が叫ばれても、根本的には①この傾向には歯止めが利かない。それはちょうど、近代的病院で、病気を扱う諸部門が、外科や内科等々として、細かく分かれ、人間全体を扱ってくれる部署が存在しないのと、同様である
 二つには、科学的知は、対象を、自分と無関係な事柄として扱う客観性がその特色をなしているので、そこでは、私たちが、自己として、主体的に決断して実践的に生きてゆく行為の問題を、本質的に扱うことができないのである。というのも、ある状況のなかで、いかに生きるべきかをよく考え、決断し、行為してゆくためには、来し方行く末をよく熟慮して、もはや無い過去と、いまだ無い将来とを視野に収めながら、現在の状況のなかに突き入ってゆかねばならない。しかし、そのような無いものを視野に収めながら、記憶と期待の熱い思いを抱きつつ行為することは、知覚的に有る現在の事実に検証されることによってのみ確実性を得ようとする科学の実証性とは、まったく別個の事柄だからである。客観的な事実確認のみを大事と考える科学の次元と、人生の岐路に立って、右すべきか左すべきかに思い悩む行為者の立場とは、別個の事柄である。②科学は、いかに生きるべきかという後者の問題を、本質的に扱うことができないのである。
 したがって、科学とは別に、存在の全体を視野に収め、世界のあり方の原理的全体を考慮して、世界観の知を育むと同時に、そのなかで、人間はいかに生きるべきであるのかという、人間の主体的 な行為の根本を考究して、人生観の知を形成するところに、哲学的な知の本質的な成立根拠があることになる。哲学が愛し求める真実の知とは、こうした人生観・世界観の根本的にほかならない。

( 二郎 『現代の哲学』 による )


(注)捨象する:捨て去る

(59)科学的にもごとを見るとういうことを、筆者はどうのようにとらえているか。

(60)①この傾向とあるが、どうのような傾向か。

(61)②科学は、いかに生きるべきかという後者の問題を、本質的に扱うことができないとあるがなぜか。

(62)哲学的知の重要性はどこにあるか。

統合理解
A
 アートを買うか買わないか。その後もコレクションし続けるか、止めてしまうのか。
いずれも最初の一点をうまく買えるかどうか、そしてその最初の作品が、自分にとって後々までも価値あるものかどうかで決まってくると思います。
 勿論ここでいう価値とは単純な市場価値だけではなく、求めた人にとって、飽きずに長い間付き合い続けられる魅力のことを指しています。この自分満足の部分が大きくないと、なかなか次の一点に手が伸びにくいのではないでしょうか。
 アートは大好きだけれど作品を買うほどではないと最初は思っていても、一度購入してみれば、後は堰を切ったように(注1)買い続けてしまったコレクターの方達を身近に何人も見ています。

(宮津大輔 『現代アートを買う』による)



B
 真にアートの価値が分かる用になるためには、やはり、買うと言うステッブに至らないといけないと思う。実際に買って自分のものにしてこそ、本当にわかってくるものだ。自分がお金を出して手に入れたものだからこそ、愛着も出てくるだろうし、身近において毎日みていることで、いろんな刺激を受けていくはずだ。 (中略)
 数万円にしろ、数万円にしろ、いくらかのお金を出して買うんだから、それに見合うだけのものかどうかをしっかり吟味すること。ギャラリー(注2)で作品と対峙(注3)して、これ、おもしろいな、とか、好きだなと心を動かされる作品に出会えたら、さらに、どうして自分はこれが好きなのか、一歩踏み込んでその理由を考えてみることだ。
 大切なのは、自分にとって、これは充分な価値のあるものだと思えるような、自分自身の基準を持つということである。

(小山登美夫 『その絵、いくら? 現代アートの相場がわかる』による)


(注1)堰を切ったように:ここでは、勢いが止まらずに
(注2)ギャラリー:美術品の展示場
(注3)対峙する:向き合う

(63)A とB はアートを買うことについて、どのような考えを持っているか。

(64)アートの価値について、A とB が共通して述べていることは何か

(65)アートの価値についてAとBが共通して述べていることは何ですか

漢字読み

1。 珍しいイベントがあると聞いて、広場に群衆が押し寄せた。

2。 これまでの学説を覆すような新事実が発見された。

3。 この文書には、当時の生活の様子が克明に記録されている。

4。 窓を開けると、心地よい風が入ってきた。

5。 新社長は、これまでの経営方針を踏襲すると述べた。

6。 新しい政権には、医療制度の改革が期待されている。

文脈規定

7。 この本は内容が難しすぎて、初心者には(  )が高いと思う。

8。 プランの(  )はすでに固まっています。

9。 本書の改定(  )は、9月上旬に発売の予定です。

10。 システムトラブルの原因を徹底的に(  )し、再発防止に取り組みたい。

11。 カタカナの「ソ」と「リ」は(  )ので、名前を書くときは気をつけてください。

12。 この業者は魚を缶詰に(  )し、それを海外に輸出している。

13。 市役所のロビーで、アマチュア写真家による写真展が(  )います。