人間の判断というのは、時々意外な結果を見せるものである。
こんなマーケティング調査がある。白・青・黄色の3種類の箱に入った洗濯用の洗剤を、大勢の消費者に使い比べてもらう。そして、「どの箱の洗剤が一番汚れが落ちましたか?」と尋ねる。すると、ほとんどの消費者が「青」と答えたのだ。その次が白で、黄色と言った人はほとんどいなかった。しかし、実際は3つとも同じ洗剤だったのだ。人間は、「洗剤」には「青」が最もふさわしいと感じるのだろう。

(7)この調査結果で筆者が一番言いたいことは何か。

もともと猫好きで、飼っている猫のこと、死んでしまった猫のことについてはいくつも文章を書いたことがある。子どものころは家に犬がいたけれど、これは頑固(注)なテリア犬で、小学生の私を主人として認めていなかったから、私の言うことなどまったく聞かず、散歩に連れて行くのも面倒なだけだった。もっと歩あるきたいのだろう、どんどん先へ歩いて行こうとする犬を引っ張って帰って来るのがいつも苦痛だった。私はその犬が好きになれなかったし、犬の方も私のことが好きではなかった。要するに、(  )。
(注)頑固がんこ:人の考えを受け入れられず、自分の考えを変えようとしない性格。

(8)(  )に入る最も適当な言葉はどれか。

 子どもたちの何かが変わってきた。。。いまの子どもたちが一番変わったところは、自分を語れなくなったこと。少し前の子どもたちは、「どうして悪いことをしてしまったの?」と間いかけると、「どうしてそうなっちゃったんだろう」と、それなりに(注)一生懸命考えて答えを出してよこしたものだが、いま、そう問いかけても答えられなくなくている。おしゃベリはよくするのに、自分の心を言葉にするのは苦手で、自分を理解してもらおうという努力がないのである。これは、自分を語るという場が少なく、経験もないからに違いない。

(野代仁子『非行を叱る~カウンセラーのノートから』による)

(注)それなりに:その入ができる範囲で

(55)少し前の子どもと比べて、いまの子どもが変わったところはどんな点か。

(2) イアン様
 先日はお便りありがとうございました。こちらこそごぶさたしております。卒業記念発表会のご案内状もありがとうございました。ホームステイでわが家にいらっしゃった時は、まだ来日なさったばかりでしたのに、もう2年にもなるのですね。 ほんとうに早いものです。あの時はほとんど日本語が話せなかったので心配でしたが、発表会では大勢の人の前で日本語で話されるのですね。本当に驚きました。発表会へは、家族そろって、うかがうつもりです。イアンさんの発表をお聞きするのが今からとても楽しみです。
 ところで、その後は何かご予定がありますか。よろしければ一緒にお食事でもいかがでしょうか。ご都合をお聞かせください。
では、発表会当日を楽しみにしております。

3月10日
田中よしこ


(56)この手紙で表されている書き手の気持ちとして、最も適当なものはどれか

(3)
 初対面(注1)の人を目の前にした時は、どんな人でも緊張感を持って接するでしょう。相手が不快にならない言葉を丁寧に選んでいるはずです。ところが、 2回、3回と顔を合わせるうち、次第に慣れが生じます。その時が、人づきあいがスムーズ(注2)になるかどうかの分岐点(注3)ではないかと思うのです。親しくなりつつあるからこそ距離をおき、もう一度相手をよく見つめてみること、そして、相手の個性を理解した上での接し方を工夫していくことが大切なのではないでしょうか。

(斎藤茂太「究極の誌葉は「ありがとう」「PHP」平成14年1月1号こよる)距離をおいた時


(注1)初対面の人:初めて会う人
(注2)スムーズになる: 順調に進むようになる
(注3)分岐点: ものごとの分かれるところ

(57)筆者は人づきあいにおいて、どんな時に注意することが必要だと言っているか。

(4)
 人間とは不思議なもので、年をとってもいろいろな新しいことを経験したいという気持ちがある。例えば自分で茶わんを作ってみるとか、ピザ(注1)を焼いてみるとか、さまさまな新しい挑戦(注2)がある。
 しかし、当然のことながら、それがうまくいくことは少ない。茶わんはぜんぜん丸く作れないし、ピザはおいしくない。だが、それを恥ずかしく思う必要はないのだ。最初からうまくできるなら、世の中のさまざまな学校や修業(注3)は必要ないことになる。初めはうまくいかないのが当たり前なのだ。
 それなのに、家族の者に「変な形」、「まずい」などと言われると、「もう二度と作らない」と思ってしまう。初めての挑戦には、周りの人々の理解と応援も必要なようだ。

(注1)ピザ:イタリア料理の一つ
(注2)挑戦:困難なことに立ち向かっていくこと
(注3)修業:技術を習い、身につけること

(58)「新しい挑戦」とあるが、筆者はこれについてどう思っているか。

(5)
 下のA一Dは、それぞれア、イ、ウ、エのどこかに入る文です。
 私が図書館で働いていたころ、進くんという六つの男の子が、ときどき図書館へやってきました。本には全然興味がないらしい進くんが、そもそも(注1)どうして図書館へ来たのか、そこのところはわかりませんが、とにかく、[ ア ] あるとき、それをしかるかわりに、絵本を読んでやったところが、それからは、[ イ ]でも、見ていますと、 [ ウ ]
 それでいて、読み進んで残りのページが少なくなると、「これがすんだら、あれね」と、次の本をさすのです。結局、 [ エ ]
A 進くんにとっては、読んでもらうということが、かまって(注2)もらえるという意味でうれしかったのでしょう。
B やってくると、一応パラパラと雑誌を見て、そのあと奇声(注3)を発したり、机の間を走ったり、騒ぎはじめます。
C 肝心(注4)の読んでもらっている本には、それほど興味を持っていないことがわかるので す。
D 来るたんぴ(注5)に、読め読めとせが(注6)むようになりました。
(松岡享子『えほんのせかい こどものせかい」目本エディクースクール出版部による)
(注1)そもそも:もともと、第一に
(注2)かまう:世話をする、相手になる
(注3)奇声を発する:高くて変な声を出す
(注4)肝心の:いちばん大事なはずの
(注5)たんびに:たびに
(注6)せがむ:しつこく頼む

(59)適当なものはどれか。

(1)
我が家では「バカ」という言葉を使ってはいけないという禁止令を出しました。何気なく口に出していた言葉、ついつい使ってしまいます。ある時「バ」まで言ってから気がついて、子供はその後「……ビブベボ」。私は「バ……バン、バン、バン」と続けてごまかしました。怒ってた気持ちが笑いに変わりました。

(55)「『バ』まで言ってから気がついて」とあるが、どんなことに気がついたのか。

(2)
 日本が島国であることは誰でも知っているけれども、たいていの人は日常生活の中でそのことを忘れている。日本全体の面積の95パーセントは本州(注)・北海 道・九州・四国の四つの島が占めている。この四島では(  )、周囲を海に囲まれているという実感は薄い。本当に島という感しを味わうにはもっと小さな、いわゆる離島に行ってみなければならない。
(池澤夏樹「むくどり通信」朝廿新聞杜による)

(56)この文章の(  )の部分には、次のうちのどれが入るか。

 (3)
 日本人は、水をめぐって古くから争ってきた。日本は比較的雨が多い国なので、水には不自由していないはずである。しかし、日本の川は流れが速くて利用が難しく、地下水が出るところも限られているため、水を得るには大変な苦労が必要であった。水がないために、米はもちろん、作物さえもほとんど作れない地方もあったのである。この事情は、基本的には現在も変わっていない。大きな川がない市や町では、となりの市や町に、金を払って水道の水を分けてもらっている。そのため、住む場所によって、水道料金には大きな開きが見られる。

(57)「この事情は、基本的には現在も変わっていない」とあるが、この事情とはどのようなことか。

(4)
 昔、モンシロチョウで実験してみたことがある。ケージの地面にいろいろな色の大きな紙を敷き、チョウがどの色の紙の上をよく飛ぶかを調べたのだ。やはり緑色の紙の上を、もっとも好んで飛ぶようであった。なるほど、チョウは緑色であれば紙でもいいのだな、とぼくは思った。
 けれどこれは、チョウチョにはたいへん失礼な思いちがいであった。ほんものの草を植えた植木鉢をたくさん並べたら、チョウは緑色の紙など見向きもせず、ほんものの草の上ばかりを飛んだのである。

(58)「これは、チョウチョにはたいへん失礼な思いちがいであった」とあるが、どんな思いちがいをしたのか。

 (5) 
 いつのころからか、「若い人になにをのぞむか」とか「どのように生きてもらいたいか」というような質問をされるようになりました。 はじめは当惑しました。お前はもう若くないんだ、と不躾けにいわれたような気がして、ちょっと対応が乱れたりしましたけど、まあ、いまはそんなことをいいたいのではない。
 そういう質問をされて、自分が長いあいだ、人に「どう生きて欲しい」などと願ったりすることから遠いところにいたんだな、ということに気がついたのです。だいたい、若い人にどう生きて欲しいなんていってみたって、いうことをきく人がいるものかと、自分の若いころをかえりみて、そう思うし、多少は影響をあたえうるかもしれない自分の子どもにたいしても、ほとんどそういうことは願わずに生きてきました。

(59)「気がついたのです」とあるが、筆者はどんなことに気がついたのか。

(1)
 ピアノの生徒さんがレッスン(注1)にみえる前に、自分のための練習を、少ししていました。 そのとき、 「ちょっっとよろしいでしょうか」 と、不意(注2)に入ってこられた方がありました。 「いまそこのクリーニング屋さんに参りましたら、ピアノの音が聞こえて、それで、しばちく耳(注3)をかたむけていましたの。 じつは、わたくしの家には古いピアノがありますけれど、誰もひく人がいません。わたくしも、ピアノは大好きですし、自分で弾けたらいいなあ、と思いながら、習うきっかけもなくて、今日まできてしまいました。
 今年74歳になりますけれど、もしかして、今からピアノがひけないものかしらと思いました。 いま、あなたのピアノを聞いているうちに、うかがいたくなってしまいました、突然でごめんなさい」今まで一度もピアノを習ったことがない、ということでしたけれど、しばらく練習にいらしてみたらいかがでしょう、と申し上げましたら、その方は、とてもうれしそうに帰られました。

(『暮しの手帖1第68号による)


(注1)レッスン:生徒が先生から教えてもらうこと
(注2)不意に:突然に
(注3)耳をかたむける:注意して聞く

(55)この客の希望は何か。

 (2)
 私が左ききの(注)をはじめて意識したのはおとなになってからでした。 後輩の医者に
 一人左ききの人がいて、いっしょに夕食を食べにでかけると必ず私の左側にすわろうと
 するのです。 「先生の右側にすわると、おはしを持った私の左手と先生の右手がぶつかって、申し訳ないから……」というのが、①その理由でした

(細谷亮太「わくわく子育て」1995年2月8日付朝日新聞による)


(注)左ききの人:左手で字を書いたりはさみを使ったりする人

(56)①その理由でしたとあるが、何の理由か。

 (3)
 暑い日が続いていますが、お元気でしょうか。わたしはあいかわらず元気に過ごしております。 ところで、先日、山田先生の出版記念パーティーのお知らせをいただいたのですが、わたしほ残念ながら出席できそうにありません。学生の時あんなにお世話になったのだから、だれよりも先にお祝いしなければいけないのに、前々から決まっていた海外出張で、どうしても予定を変えられないのです。どうぞ、先生に、また昔の仲間たちにも、よろしくお伝えください。それから、みんなで何か紀念の品をお贈りするのでしたら、ぜひわたしもその一人に加えてください。近くお電話いたしますので、その時に金額などお教えいただければ幸いです。 楽しい会になりますようお祈りしております。ではまた、お電話で

(57)ではまた、お電話でとあるが、この人が電話する第一の目的ほどのようなことか。

 (4)
 親に面倒をみてもらって育つ動物の子どもたちは、親のそばにいたがり、親のするとおりにするという習性(注1)を持って生まれてくる。親は教えるつもりなどなく、子の方でも教わるつもりなどないが、徐々に親の知恵は子にコピーされていくのだ。 (中略) 例えば、子猫が親猫と一緒に出かけて行くとする。道を渡ろうとしたとき、向こうから車が来る音がする。親猫は「怖い!」と思って引き返す。そのとき子猫は親と同じ思いで「怖さ」に同調(注2)するのである。そして親と同じことをする。これで小猫は車の音が危険の到来(注3)だということと、どうやって避ければ良いかということを学ぶ。

(加藤由子「雨の日のネコはとことん眠い」による)


(注1)習性=動物の行動に見られる狛特の性質
(注2)同調する:他のものと調子を合わせる
(注3)到来:やって来ること

(58)親と同じことというのは、ここではどういうことか。

(5) 次のグラ7は三大都市圏の人口が全国の人口に占める割合を表したものです。
(国勢社『日本のすがた1908』
.、『1997/98年版日本国勢図会』による)

(59)グラフの説明として正しいものを選びなさい。

 (1)
 日の出、日の入りは太陽の上のヘリ(注1)が地平線にかかった瞬間をいうことは比較的よく知られています。
 つまり、日の出とは太 陽の上のヘリが地平線に顔をのぞかせた(注2)瞬間、日の入りとは太陽の上のヘリが地平線に沈んで、太陽がまったく見えなくなった瞬間です。
 このことから類推して(注3)、月の出、月の入りも同じように決められえているのだろうと思っている人が多いようですが、月の場合は違います。
 月の出、月の入りとは、月の中心が地平線にかかった瞬間をいうのです。
 では、なぜ月の場合は太陽と違う基準を採 用して(注4)いるのでしょうか。
 そのわけは、月には満ち欠けの現象があるからです。上のヘリと決めたのでは、三日月のときなど観測が 難しくなります。月の中心でしたら、三日月の場合でも、弧(注5)の一部から円の中心を求めるのと同じで、すぐにわかります。

(日本社『つい誰かに話したくなる雑学の本』購談社による)
(注1)へり:ふち、はし
(注2)顔をのぞかせる:一部分が見える
(注 3)類推する「るいすいする」:すでにわかっていることをもとに、他のこと
(注4)採用する「さいようする」選んで使う
(注 5)弧「こ」:円周の一部分

(55)日の出の瞬間はどれか。

 (2)
 「今週末は快晴に恵まれそうです」。こんな天気予報を聞いて、いつからいつまでを「週末」だとイメージするか。答えは土曜、日曜という人が5割。「常識的」と感じるかもしれないが、残りの5割はそう考えていないと思うと、ちょっと驚く。
 これはNHKの放送文化研究所が定期的に実施している言葉遣いに関する全国調査の一部。昨年11月のアンケート(注1)で20歳以上の男女約1400人が回答した。
 「週末」については20代で四人 に一人が、金曜の夜から日曜の夜までと比較的とらえて(注2)いる。週休二日制が当たり前、という生活スタイルが身についているせいだろう。
 一方、60代以上になると週末は土曜だけと考える人が19%。日曜は「末」ではなく、あくまで一週間のははじまりの日ということだ。単純 な言葉一つとっても「常識」にはずいぶんと幅がある。
(「女性かわらばん」2000年2月14日付日本経済新聞による)
(注1)アンケート:おおぜいの人に同じ質問をする調査
(注2)とらえる:考える新聞による)

(56)「週末」に関するアンケー トで、調査結果と合っているものはどれか。

 (3)
 テレビの名司会者はインタビューによって相手のゲスト(注1)からい ろいろおもしろい話を引き出すことができるので感心するのですが、素人司会をしてもこうはうまくかないでしょう。型どおりの挨拶くらいはできるとしても、内容のある深い話を聞き出してゲストの持ち味(注2)をうまくが生かすことは大変難しいことです。それには司会者としての特殊なタ レント性(注3)が必要なようです。
(池田央『テストの科学』日本文化科学社による)
(注1)ゲスト:ここでは 「番組に招待された人」の意味
(注2)持ち味:その人の持っている独特のよさ
(注3)タレント性:才能

(57)名司会者とはどのような人か。

(4)下のグラフは、東京区部(注)とその周辺地域(A地域·B地 域)における平日の交通に関する調査結果である。グラフの①から④は交通機関の利用目的とそれにかかった時間を示し、グラフの⑤は自動車を、⑥は鉄道を利 用した人の一人あたりの平均利用時間を示している。また、●は男性を、○は女性を表している。
(注)東京区部:東京23区。東京の中心部

(58)グラフの説明として正しいものはどれか。

 (5)
 人が所有して(注1)いる働く能力を、( ① )能力、( ② )能力、概念化能力、( ③ )能力の四種類で説明する考え方があります。 ( ① )能力とは、ものをつくったり販売したり、サービスをする場合の業務を果たす(注2)能力のことです。( ② )能力は、ド ラッカー(注3)のいう「他の人間とともに働く能力」のことです。概念化能力とは、物事の論理を言葉に換える能力のことと考えればいいでしょう。 そして( ③ )能力とは、( ① )能力、( ② )能力、概念化能力を情報してまとめ、システム(注4)に仕上げて他人に伝えやすく、検証(注5)し やすいように変える能力のことです。
(森清『会社で働くということ』岩波書店による)
(注1)所有する「しょゆうす る」:持つ
(注2)業務を果たす「ぎょうむをはたす」:仕事をきちんとやる
(注3)ドラッカー:アメリカの経営学者
(注4)シス テム:組織、体系
(注5)検証する「けんしょうする」:実際に調べて確認する

(59)( ① )から( ③ ) に入る適当な言葉はどれか。

 (1)
 上智大教授(哲学)のアルフォンス・デーケンさんは毎年、一年生たちに人間学の講義をする。50人ほどの教室を見渡しながら先生は、講義中に決して笑わない学生のリスト(注1)を作っていく。先生だけの心覚えで、笑わないからといっ て落第点をつけるわけではないが。 「一年間に一度も笑わなかった学生のうちの何人かが、病気になったり、退学(注2)したり、自殺未遂(注3)をしたりします。」
  笑わない学生というのは生真面目すぎて、いつも緊張しつづけている。それが肉体と精神両面の衛生によくないことを、リ ストは立証(注4)してみせている。 「ですから私は、(  )、というのです」
(上前淳一郎「読むクスリ14」文芸春秋による)
(注1)リスト:名前を書いた表
(注2)退学:途中でがっごうをやめること
(注3)自殺未遂:自殺をしようと したこと
(注4)立証:証明すること

(55)(  )に入る最も適当なものを一つ選びなさい。

 (2)
 母の日(注1)の翌日、同じ幼稚園に20年間通い続けて、幼児たちに母親の顔を描いてもらっているある児童心理学者が、「子供たちの描く画に、最近二つの変化が現れた―― 目尻(注2)がつりあがり、口が大きくなってきた」といっていました。
 子供は正直です。母親の顔から笑顔が消えて、子供を睨みつけ、大きな口を開けてがみがみと怒鳴りつける母親の顔が見えてくるようです。
(太 田典生「「いい話」のおすそわけ」三笠書房による)
(注1)母の日:五月の第二日曜日で、子が母に感謝する日
(注2)目尻:

(56)この文章で筆者が最も言いたいことは何か。

(3)
 次の文章は男女平等に関する国民の意識調査 の結果についてのべたものです。
 20歳以上の人に男女の地位の平等感に関する面接調査を行った。[法律や制度上]、[家庭生活]、[社会通念(注1))·慣習(注2)·しきたり(注3)] において、それぞれの男女が感じる平等感を聞いたところ、次のことがわかった。[法律や制度上]は、女性の約55%が「男性の方が非常に優遇されている」 または「どちらかといえば男性のほうが優遇されている」と考えており、「平等である」と考える女性は30.8%にとどまる。または[家庭生活]においては、男性のほうが優遇されていると感じる女性が[法律や制度上]より増加するが、同様に感じる男性は全体のほぼ半数である。さらに、[社会通念·慣習·しきたり]においては、「男性のほうが非常に優遇されている(注4)」または「どちらかといえば男性の方が優遇されている」という意見が、男女とも 70~80%を占めている。

(注1)通念:社会一般に共通した考え
(注2)慣習:社会一般に古くから行われている習慣
(注3) しきたり:昔から伝えられているやり方
(注4)優遇されている:有利に扱われている

(57)次の A·B·C のグラフは、 それぞれ[法律や制度上]、[家庭生活]、[社会通念·慣習·しきたり]の分野における男女の平等感を図示したものです。A·B·C が、それぞれ、どの分野を示したものか、次の組み合わせの中で正しいものを選びなさい。

 (4)
 人間の集まりが、一つの方向に偏っているのは不吉(注1)だ。いろいろあっても、全体としてのバランスの程のよさが好ましい。
 ところが、一人 一人が「バランスのとれた人間」になろうと、みんなが同じ姿勢をとりだすと、その集団の中にいては気づかぬかもしれぬが、外からは異様(注2)な偏った集団に見えてくる。もともと、「バランスのとれた人間」なんてものが、本当にあるものかどうか、疑わしくもある。むしろ、ひとりひとりは、[ ]、そのほうが理想だろう。
(森毅「気まぐれ数学のすすめ」青土社による)
(注1)不吉:何かよくないことが起こりそうだと感じ る様子
(注2)異様:普通ではないようす

(58)この文章の[ ]の部分には、どんな内容が入るか

 (5)
 よく知っている人が遠くに見えたとする。遠ければ遠いほど、その人は小さく見える。これはだれでもわかっていることである。が、もし、その人が五円玉(注1)の穴の中に収まる(注2)ほどにしか見えなくても、頭の中では身長をちゃんと思い浮かべているのである。五円玉の穴の中に収まるくらい小さくなってしまったとは思わないのである。小さく見えるということが距離を感じ、頭の中でもとの大きさにちかづけて解釈しているのである。人に限らず、道の幅にしても四角や丸の形にしても、それをどんな角度から見ていたとしても、元の大きさ、カタチを感じとるという習慣がついているのである。
 (中谷隆夫·古川日出夫·北山誠·水戸泉「美術のとびら」日本書籍による)
(注1)五円玉:五円の硬貨
(注2)収まる:入る

(59)「五円玉の穴の中に収まるくらい小さくなってしまったとは思わない」とあるが、それはなぜか

 携帯電話を持っている子どもたちは、たえず友人とメールでやり取りしている。メールが来ているかどうかを、一日に数十回もチェックし、メールが届けば、すぐ返信している。相手からのメールがちょっと途切れる(注1)と、なにか落着かない不安な気分になるらしい。これはまさに、メールなしでは過ごせないという症状で、「メール依存症(注2)」という名の病気のようなものである。そして、見過す(注3)ことができないのは、こういった傾向が実は大人の中にも確実に増えているということだ。これを単なる社会現象や流行として片付けてよいとは思えない。
(注1) 途切れる : 続いていたものが途中で切れる
(注2) 依存症 : 心の支えを何かに求める傾向
(注3) 見過ごす : 見て知っているが、特に問題にしない

(4)問 筆者がこの文章でいちばん言いたいことはどんなことか。

(1)
 私たちが口にする食物の大部分は多くの水を含んで成り立っています。したがって、食べ物を食べることは同時に水をかなり体内に取り入れているわけです。もし、食物から水分を取り除いてしまうと、多量に水分を含んでいる食物ほど、その形を保て(注)なくなります。また、食物の水分は形態保持(注)だけではなく、その食物の味覚の保持にも役立っているわけで、日時がかなり経過して水分が減少した食物がまずくなってしまった経験があるでしょう。普段それほど意識しない食物の水分が私たちの体に重要な役割を果たしているのです。

(平湯猛男 「水のふしぎ発見】 山海党による)


(注) 保つ/保持 : ある状態を変えないで続けること

(55) 食物に含まれる水分の役割として、 筆者が述べていないものはどれか。

(2)
 同じ距離を電車に乗って通勤していても、電車に乗っている時間を、長いと感じる時と、「あれっ、もう着いたのか」と思うほど短く感じる時とがある。
 では、その差はどこにあるのだろうか。一言で言うなら、「   」ではないか。雑誌や本を一生懸命になって読んでいたり、考えごとに没入(注)しているような時には、時間はあっという間に過ぎてしまう。ところが、手持ち無沙汰で、何もすることもなく、考えることもないような時には、いつまでたっても、日的地に着かないような気がする。座っていても腰が痛くなってくる。

(秋庭道陸「ことばの切れ味】 講談社+文庫による)


(注)没入 : すっかり入りこちこと

(56)「   」に入る文として、最も適当なものはどれか。

(3)
 教育甘というのは、別に学校の教師に限らない。会社員の中にも、教育者としてのアイデンティティ(注)を持っている人はいる。街で子どもたちを集めてサッカースクールをやったり、剣道の教室をやったり、ピアノを教えたりという人は、たくさんいるだろう。その中には小遣い稼ぎだと思ってやる人もいるかもしれないが、多くの人は、子どもたちに何か大切なことを伝えたい、という思いをもってやっている。そういう人のアイデンティティは、教育者ということになる。

(齋藤 孝『教育力』 岩波新書による)


(注) アイデンティティ : 他と区別する自分らしさ。

(57) 筆者の言うそういう人とは、たとえば、どのような人か。

(4)
顔は、生きるためだけではなくて、ほかにもいろいろな役割をもっています。そのーつは、その人を識別するための手がかりとしての役割です。顔を見れば、その人が男であるか、女であるか、何歳ぐらいであるか、ということがだいたい見当がつきます。中には見当がつかない人もいますが、要するに一種の「証明書としての役割」を顔は担っているのです。知っている人であれば、顔を見ればその人の名前もわかるでしょう。

(廊島 博『顔学への拘待」 岩波科学ライブラリーによる)

(58) 筆者がこの文章で最も言いたいことは、どのようなことか。

(5)
 相手が何者かよくわからない社会では、無視黙殺するほど危険なことはない。見知らぬ他人というのは、潜在的な敵(注1)である。そう思えば、相手を敵にまわさないためには親しくなるしかない。だから初対面の相手とはせわしなく(注2)言葉を交わし、「わたしはあなたに敵意はないよ」「だからあなたもわたしに敵意のないことを示してくれない?」とメッセージを送る。あかの他人というものから成り立っている社会では、そういうコミュニケーションの作法が発達するのだろう。

(上野千鶴子「国境 お構いなし』 朝日文庫による)


(注1) 潜在的な敵 : 敵になる可能性のある人
(注2) せわしなく : 落ち着かない様子で

(59)なぜ、初対面の相手とはせわしなく言葉を交わすのか。

(1)
 今の多くの若者にとって、 日本も自分も将来が見をない。 (中略)
 高校生へのグループインタビューの結果でもほとんどの生徒の上昇志向は皆無に等しい。将来の夢が「つぶれない会社になんとか潜り込むこと」であったりする。政権交代しても政治や経済がよくなることもない現実を目のあたりにしている若者が政治に関心をもてる道理がない。関心の行き着く先は自分とその周辺である。

(橋元良明 「メディアと日本人』 岩波新書による)

(55) インタビューでどのように答えた高校生が多かったと考えられるか。

(2)
 まだ幼かった頃、近所の原っぱで紙しばいを見終えた後、夕ごはんに間に合うように走って帰った夕暮れの美しさは今も忘れない。あの頃、時間とか、自分をとりまく世界を、一体どんなふうに感じていたのだろう。一日が終わってゆく悲しみの中で、子どもながらに、自分も永遠には生きられないことを漠然と(注)知ったのかもしれない。それは子どもがもつ、本能的な、世界との最初の関わり方なのだろうか。

(星野道夫「『旅をする木」 文藝春秋による)

(注) 漠然と : ぼんやりと

(56) それとは何を指しているか。

(3)
 おばあちゃんがケガをしたせいもあって、外出されなくなった。家にこもってばかりいずに散歩でもしたほうがいいと、周囲の者がいくらすすめても、おばあちゃんは耳を傾けようとされない。
 ところが中学1年生の孫娘さんが、「散歩しようヨ。(  )」と言うと、おばあちゃんは早速外出きれ、出会う人に対して、「孫にせがまれて(注)散歩しています」と生き生きとした表情で話されたそうである。
 「体にいいから散歩しなさい」とか、「散歩に連れていってあげようか」とかの言い方と比べると「(  )」という言葉のやさしさがよくわかるのである。

(河合信座『「老いる] とはどういうことか」 講談社+ a文庫による)


(注) せがむ : 熟心に頼む

(57) (  )の中に入る言葉は、次のどれか。

(4)
 大学当時、毎日のように入り浸っていた美術部の部宇には、いろんな静物が置いてあり、暇があればキャンバス(注1)に向かっていた。描いてみればわかることだがりんごの質感は、空腹であればやわらかく感じられるし、そうでもなければつるんとして陶器(注2)のようにも見える。つまり「あるがままに」描くということは、対象ではなくむしろ自分のこころの状態を、キャンバスの上に再構成することなのである。ということは要するに、私にとって絵を描くという行為は、「自分とは何か?」を解明する作業に他ならなかったわけである。

(石湿 減・池谷瑠絵「ロボットは涙を流すか】 PHP サイエンス・ ワールド新書による)


(注1) キャンバス : 絵を描くための布
(注2) 陶器 : 土を材料にした焼き物

(58) 筆者にとって、「絵を描く」ことは、どんな意味があるのか。

(5)
 日本人は、本質や人格が日に見える部分に表れるものだという感覚が強い。
 そのために、「私は男性を見るときに、まず傘と靴を見て判断する」などと言う人が出てくる。また、心理テストのようなもので社員の採用を決める会社もある。
 そういった語を「人を見る日があるな」などと感心して聞いているのは感心しない。私に言わせてもらえば、日常生活では誠実に制御している深層心理を暴き出して(注1)それを本質と見るなどというやり方はアンフェアだ。第一、持ち物や点数に頼るようでは、眼力がないことを露呈(注2)しているようなものだ。そうした偏った見方なり、安直な(注3)ペーパーテストなりをやめて、自分と相手との関わりから見るべきなのだ。

(斎藤着「眼カ」三移書房による)


(注1) 暴き出す : 隠しているものを探して出す
(注2) 露呈 : 隠れていたことを、わぎと表面に出すこと
(注3) 安直な : 安くて簡単な

(59) 筆者は、「人を見る目」とはどのようなものだと考えているか。

(1)
 食事の作法は、世界各国で違うから私には大変おもしろく思える。
 時々、日本以外の国のホテルで、サラダのお皿などを持ち上げて食べている日本人を見かける。あれは外国の習慣に慣れないことを示してはいるのだが、日本では子供の時から、決してご飯をいれる茶碗や、スープを入れる本のお椀を、下においたままと食べてはいけない、としつけられているのである。ご飲茶碗を下においたまま食べようものなら、母は、「そういうだらしのない食べ方をしてはいけません」と叱る。

(三浦洒門・曽野綾子 『日本人の心と家』 読売新聞社による)

(55) この文で筆者が説明している「日本人の食事の作法」は、どれか。

(2)
 生物の活動が昼夜の長さ、いいかえれば明暗の周期(光の周期)によってきまる現象は、「光周性」と呼ばれている。
 植物の花がいつ咲くか、動物がいつ繫殖(注)するか、いつ冬眼に入るかなど、いろいろなことが光周性によってきまることが、今ではよくわかっている。小鳥は光周性によって春の到来を知り、さえずり(注2)出すのである。
 その一方、多くの昆虫は暖かさで「春を数えて」 いる。
 昆虫が温度で春を数え、その昆虫を餌にしてひな(注)を育てる小鳥が日の長さで春を数えるということになると、そこに食いちがい(注4)がおこる可能性が生じる。

(日高敏際『セミたちと温暖化】 新潮文庫による)

(注1) 繁殖する : 動物や植物が生まれて増える
(注2) さえずる : 小鳥が鳴く
(注3) ひな : 鳥の赤ちゃん
(注4) 食いちがい : 少しちがって、一致しないこと

(56) そことは、何を指しているか。