半年の男性は、女性から「ありがとう」といわれたがっているのではないだろうか。(50) 私もそう思っているからである。
 たとえば、地方出張の帰り、空港で土産を買って、家族に差し出す。
 「ハイ、お土産」 受取って妻がうれしそうに、
 「ありがとう」
 こう言ってくれるのを楽しみに、実は買ってくるのだが、この期待はほとんど裏切られる。黙ってお土産を受取るなり、冷蔵庫の上かなんかに、ぽんと (51) 、 「お風呂、入りますか?」
 などと、手続き的なことを言われて、いたく (52) 。
 「あなたって、やさしいひとね」などと (53) 。一言、「ありがとう」 それで十分なのである。
 交際して間もない頃、プレゼントすると、 「ありがとう。これ、前からほしかったの。すごく嬉しい」 と、喜んでくれる女性が、結婚して五年十年立つと、男の心理が分からなくなるのだろうか。
 「お土産なんか買ってこなくて良いわよ。それより、酔っ払いわずに、早く帰ってきてほしい。そうしたら、「早く帰ってきてくれて、ありがとう」って、 (54) 」
 さて、あなたはどう思いますか。
 (福田「女性は話し方で9割変わる」経済界)

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 オリンピックを目前にして、スポーツ選手たちの活躍がテレビなどで放送されています。
 それは視聴者をワクワク、ドキドキ、ハラハラさせて楽しませ、夢を与えてくれるものです。
 (50)、私は楽しむよりも、選手たちの気持ちや体調が気になって(51)のです。プレッシャーから押しつぶされそうになりがちな気持ちと戦っているせいか、疲れ(52)に見える人もいます。これから上をめざす若い新人選手たちは(53)メダルを期待されている選手たちの肉体的な疲労はもとより精神的な苦しみはどれほどのものでしょう。
 もちろん、試合前の練習や表情、試合後の様子などを知りたくないなどというつもりはありませんが、なるべく試合だけに集中できるよう、ファンへのサービスに気をつかわなくてもいいようにそっとしてあげられたら、と(54)のです。

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 「トム^ソーヤ一の冒険」(注1)は19世紀半ばの米ミズ一リ州が舞台だ。いたずら小僧のトムと、相棒の浮浪児ハック。少年たちの粗野で気ままな日々は、西部への出口だった州の空気と無縁ではない。作者マーク・卜ウェイン(注2)の故郷である。
 お仕置き(注3)の塀塗りをまんまと(注4)人(50)押しつけ、トムがつぶやく。「結局この世は、それほど(51)。」読者へのエール(注5)に違いない。その作家の、つまらないはずのない自伝が初めて本になる。
 死後100年、すなわち今春まで(52-a)に出すなとの意識に従い、出版元は5千ベ一ジの手書き(52-b)を保管してきた。1世紀の時差を託したのは、宗教や政治、知人の(52-c)を正直に書いたためともいわれる。
 本をめぐる「長い約束」をもう一つ。221年前、ニューヨークの図書館で貸し出された法律書が戻ってきたそうだ。借り主は初代米大統領ジョージ・ワシントン。未返却が分かり、旧ワシントン邸の管理団体が同じ版の古書を約100万円で調達したという。
 作家と大統領は、代理人を介して「約束」を守り、21世紀に新たな話題をまいた。
移ろう時は真相をうやむや(注6)にもするが、その逆で、歳月と書物への畏れがのぞく痛快な話である。(53)本の力を思う。
 図書館で背表紙をたどれば、知らないこと、していないことの多さが身にしみる。未知と未体験の海に見え隠れする若い日の夢や憧れ、果たすあてなき約束の数々。〈20年後、あなたは、やったことよりやらなかったことに(54)〉。トウェインの言はまぶしく、ほろ苦い。
(「朝日新聞」く天声人語〉2010年6月6日付)
(注1) 「トム^ソーヤ一の冒険」…マーク・卜ウェインの長編小説。1876年刊。
(注2) マ一ク・トウェイン…アメリカの小説家(1953-1910)。
(注3) お仕置き…子どもた罰を加えてしかること。
(注4) まんまと…うまく。
(注5) エール…声援。応援。
(注ら)うやむや…はっきりしないさま。

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 海辺で遊んだ名残の砂かが、脱いだ靴からこぼれ出る。さらさらした感航と共に、灼けるビーチでのあれこれがよみがえる。砂はその地に立った証し。旅先の思い出を、世界に一つの砂時計に仕立てるのもいい。
 さて、小惑星のイトカワ(注1)の「思い出」を期待された探査機はやぶさである。カプセルをX線で訪べた(50)、1ミリ以上の砂粒はないと分かったそうだ。ホコリ状の微粒子が入っている可能性はなお残るという。
 砂がとぼれ(51-a)、はやぶさの功績が減じる(51-b)。小惑星に隆りたのも、戻ってきたのも初めてだ。イトカワ表面に黒く咲った特徴的な(52-a)、南十字(注2)が輝く天の川(注3)で燃え砕け、カプセルだけが(52-b)の尾を引いて地上に向か(52-c)は、私たちの胸に熱く残るだろう。
 ピーナツ形のイトカワは長さ約500メートル。パリのカフェに豆粒が転がっているとして、東京からそれにようじを命中させるだった。数々のピンチを切り抜けての7年、60億キロの旅は、国民を(53)。手柄はすでに大きい。
 これで、日本の宇宙開発を取り巻く空気は一変した。科学予算を削り倒すかにみえた事業仕分け人、運航さんも「全国民が誇るべき偉業。世界に向けた大きな発信」とたたえる。科学者たちにすれば、この上ない孝行者であろう。
 カプセルがイトカワの物質をわずかでも持ち帰っていれば、太陽系の起路を探るの起源を探るのに貴重な資料になる。大きな誠りに小さなホコリが花を浅え……いや、それは(54)。どんな旅も、つつがなく(注4)帰ってくるのが何よりの耳産なのだから。
-(博日新聞」く天声人妥>2010年月22日付)|
(注1)イトカワ:日本のロケット開発をした糸川英夫教授の名前が付けられた小惑星。
(注2)電十字:南十字星
(注3)天の川:川の流れのように見える無数の星の集まり。
(注4)つつがなく:無事に。

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 商談を兼ねた食事、つまりビジネスに関する変渉をすると快楽的な脳内物質であるベータエンドルフィンが分泌されるらしい。気分がよくなって商談がまとまりやすいのだ。酒が入るとさらにリラックスして、理性の制御が弱くなり、率直な言動を示すようになり、人間も性赴呈されるので、お互いを知る(50)好都合である。
 また商談における食事は、自分が相手をどのくらい重要視しているか、また相手からどのくらい重要視されているかを測る機会にもなる。やっとの思いでアポを取った大切な取引先を、どんな食事でもてなすか。それはビジネスマン(51)いつも頭を悩ます問題ではないだろうか。料理の質やカテゴリーは実にさまざまだから、相手によって、また相手と自分の関係性よっにて「最適」を考える必要がある。
 「最適」なもてなしの(52)必要なのはレストランガイドではなく、情報と誠意だ。三つの星フレンチ(注1)か「吉兆」(注2)に接待すればとりあえず場所は間違いないかもしれない。だが予約が困難でしかも高価だし、権威や美食が嫌いな人もいる。
 あまり親くしない相手と寿司屋のカウンターで横並びに坐るのは案外白けるし、鍋を囲むのは家庭的すぎるし、エスニック(注3)料理などで相手の好みを読み違えると(53)。
 最終的に重要なのは、レストラン・料理屋のランクや種類ではなく、もてなす側の誠意が相手に(54)だと思う。

(村上龍「無趣昧のすすめ』による)


(注1)フレンチ:フランス料理
(注2)「吉兆」:日本料理の料亭
(注3)エスニック:民族風

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 「時っ間て何」
 このとらえどころのないものについて、考える(50)を与えくれてたのがこの物話です。
 人間(51)時間を盗む泥棒が、大都会にはびこります。盗まれた時間を取り返してくれた少女が、主人公のモモです。心豊かに人間らしく生きる時間の過ごし方を知っいるてモモの正体は、謎に包まれています。
 モモに敵対するのは、物事をより早くこなす(52)、時間の節約と貯革を人間にそそのかす「灰の色男たち」。盗んだ時間を糧に存在するこの不気味な男たちとの対決は、スリルの連続です。
 「よりよい生活のめた」と信じて、時間を節約すればするほど、逆に人間らしさを失っていきます。せかせかした生き方社会、(53)人間が見失っているものーー童話とはいえ、この物語は現代社会を鋭く投影しているて(54)。この物語を読んでどきっとした人。灰色の男たちに時間が盗まれているかもしれない。(読売新聞2003年4月29日よるによる)

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 周りや他人が気にならないのは、若者(50)。大人もそうである。
 今度は、東京・丸の内でのできごと。あるビルの喫茶店でコーヒーを飲んでいたときのことである。
 隣のテーブルに30代ぐらいの一人の女性が、斜め向かいの位置に座った。(51)、すぐバッグを開け手鏡を取り出し、化粧を始めたのである。距離にして1メートルもない。身内でもこれぐらいの至近距離で化粧するようすを(52)。
 化粧は手際よく、数分で終わった。できあがりは、確かに「きれい!だった」しかし「美しく?なかった」
 このようなことは「他者意識」が欠如し、自己中心の毎日を過ごしているから起こるのである。周りや他人が気にならないから、関心もないし、思いやりや愛着なもいし、信頼感(53)欠落しかかっている。そういう大人が確実に増えている。(54)、「社会カ」が衰退している大人が多くなったということである。
 毎日の生活は、少々他とのかかわりやつながりがなくても生きていける状況にある。まったくなくてもそれをカバーしてくれる環境が今の日本には整っている。そのため、毎日、おいしい肉や魚、新鮮な野菜、果物を食べ、元気の出る牛乳やお酒を飲み、いつも満腹な生活をしている。こんな生活(消費)を続けていたら、「自己チュー」になることは間違いないし、危機意識も低下し、たへいんなことに発展する可能性を秘めている。

(長南博昭「溶けてまっした『他者意識』」『月消費刊者』+による)

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 人と人が内容あるコミニュケーションをするとき、そのなかだちとなるのは、「言葉」です。ありがたい気持ち、あるいは申し訳ない気持ちを感じていても、それをどのように言葉に表すか(50)、うまく伝わるかどうか違ってきます。また、人に何かを頼むときや言われたことを断るとき、どのような表現を使うかによって、相手の気持ちもずいぶん違ったものになります。
 (51)、「巧令言色鮮仁」のような言葉もあります。どのような表現をするにせよ、言葉の奥に「誠意」があることが必要です。しかし、一方で、いくら「誠意」があっても、うまく伝わらなければ、相手にとってはないのと同じだというのもまた現実です。相手を尊重する気持ちがあっても言語表現上のすれ違いがあれば、結果として相手を尊重する(52)。相手を尊重する気持ちらがある(53)、その思いをうまく表現できなかったという経験は、誰しも、多かれ少なかれある(54)。

(森山卓郎『コミュニケーションカカを磨く一一日本語表現の戦略に』よる)

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 常にメモ帳とペンを持っていましょう。一日を過ごすなかで、自分の感情や思い、つぶやきなど、どんなことでも気にかけたことを書き記しておきます。人に見せるものでは( 1 )、できるだけ正直な言葉を残します。
 仕事と暮らし( 2 )、自分を知ることはとても大切なことです。しかし、今自分が何を考えていて、何を感じていて、何を思っているのか。また、何が好きで、何が嫌いなのかなど、わかっているつもりでも、なかなかわからないものです。( 3 )、日々のメモにその断片を書き記すことで、自分を知るためのヒントとしましょう。
 どんなことでも、書き記すという習慣はよいことです。

(松浦弥太郎著『暮らしのヒント集2』暮しの手帖社刊)

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 私は旅を趣味として、様々な場所へ出かけていく。
 当然、その国、その地方で常識が違う。ごはんをはしで食べる国も(1)、フォークとナイフで食べる国もある。日本は列車やバスが時間どおり来るが、そうでない国だってある。
 しかし、私は、常識の違いに驚くことはあっても、それに対する不満を感じることはない。違っていて当然、違う(2)、旅のおもしろさがあるのだ。
 私が旅に出るのは、自分の常識が絶対でないことを確かめるためでもある。「こうしなければいけない」と(3)、知らず知らずのうちに自分をしばりつけているものから解放されたいと思っているのかもしれない。

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