人類進化学の研究によると、現在生きて地球環境問題をおこしている人類は、現代人すなわち学名をホモ•サピエンスという種類である。
 ホモ.サピエンスは今から約0万年から0万年前、アフリカに現れ、それから広く世界に拡散していって(注1)、現在ではほぼ全地球上に住んでいる。
 その間には人口も増えた。
 人口が増えれば、必要とされる食物や生活物資の量も増える。自然界には自ずから(注2)その限界というものが存在しているはずであるが、自然を支配して生きようとした動物である人間は、食物の栽培や物資の生産を始めた。そして、その生産(農業生産や工業生産の拡大によって、自然界の限界を乗り越え、人口を拡大していった。ふつうの動物であれば、一^の土地にいるその動物の個体数が増えれば、ある時点で集団の分裂(注3)がおこる。
 しかし、体に武器というものを持たない動物であった人間は、どうやら100人00人を超える大集団を作って生活し、それによって敵から身を守り、食物も獲得していたように思われる。そして、そのような大集団をなんとか維持する個体間関係を保つことが可能でもあった。
 当然ながら、子どもたちもその大集団の中で育ち、年龄もキャラクター(注4)もさまざまなたくさんの他人たちの中で、その人々のしていることから、言語や概念(注5)も含めて多種多様なことを急速に学びとって成長していったと考えられる。
 つまり、大集団で生活すること、そしてそれが可能であったということが、人間という動物の特徴であった のである。
 したがって集団の人口増加も「都市」の拡大も、人間にとって有利なことであった。こうして人間の人口は、有史以来ひたすら増えつづけてきた。そしてもはや(注6)かなり前から警告されているとおリ、今や地球環境の限界を超えてしまっているのである。
(中略)
 だとすれば私たちは今何をしたらよいのだろうか?
 自然を支配して生きていこうという人間の生きかたを、今さら変えることは無理だろう。それはライオンに草を食え、ウマやウシにネズミを食えというようなものである。体の作りからいってもそれは無理である。
 ではどうしたらよいのか?
 それには人間が自然というものをもっとよく知り、環境とは何か、それぞれの生きものにとっての環世界(注というものは何かをもっと深く知るほかはあるまい。
(注1)拡散する:広がる
(注2)自ずから:もともと
(注3)分裂:いくつかに分かれること
(注4)キャラクター:性格
(注5)概念:ここでは、意味内容
(注6)もはや:すでに
(注7)環世界:ここでは、自然環境

(69)人口の増加について、筆者はどのように述べているか。

(70)筆者によると、人間がふつうの動物と違うのはどのような点か。

(71)筆者は、地球環境を守るためにどうすればいと考えているか。

 以下は、会社における評価について書かれた文章である。
 私たちの会社では、志願(注1)してくれたのに、採用できなかった学生から、こんな問い合わせを受けることがよくあ ります。 「なぜ、自分は落ちたのでしょうか」と。
 彼らの多くは、筆記試験の成績も優秀で、面接での受け答えのしっかりした学生。合格しなかったのは、単に当社との相性を他の志願者と比べた結果であって、重大な問題があったわけではありません。しかし、彼らの頭の中には、自分と採用しなかった当社との関係しかない。だから、「落ちたのは自分に問題があるからJと考え込んでしまうのでしょう。
こういう人は社会に出ても苦労します。上司が他の社員と比べて評価を下していることまで想像が及びません(注2)から、より結果を出している同僚を棚に上げ(注3)、「自分はこんなに頑張って、成果を上げているのに評価されない」 と悩んでしまう。
(中略)
 一定の水準を満たした志願者全員が、入社できるわけではありません。一定以上の業績(注4)を上げれば、誰でも高い評価が得られるわけでもない「自分はこれだけ成果を出したから大丈夫Jということはありません。より大きな成果を出した人がいれば、自分の評価が相対的に下がるのは当たり前。大事なのは他者との比較です。単純な話ですが、皆、意外なほど、②この事実に気づいていない。
 成長するためにはまず、「自分は常に他者と比較されている」ということを意識してください。もし、社内での自分の評価を上げたければ、同僚と自分を積極的に比較しましょう。よく「人は人、自分は自分」と言います。評価の高い同僚は、あなたとは強みも活躍する領域(注5)も違うかもしれません。それでも、閉じような時期に生まれ、自分の得意分野を確立し(注6)、頭角を現している人(注7)がし、るなら、その事実lこ向き合ってください。そして、上司の視点で自分と比べてみる。「自分に足りないものJやf評価されるには何をすべきか」といったことが見えてくるはずです。

(注1) 志願する:ここでは、応募する
(注2) 想像が及(およ)ばない:想像できない
(注3) ~を棚(だな)に上げる:ここでは、~のことを考えない
(注4) 業績:仕事の成果
(注5) 領(りょう)域(し、き):分野
(注6) 確立する:ここでは、しっかり持つ
(注7) 頭(とう)角(かく)を現している人:能力が高くて、目立つ入

(71)①こういう人とはどのような人か。

(72)②この事実とあるが、どのようなことか。

(73)筆者によると、会社内情く評価されるにはどうすればいいか。

 なでるような関係を繰り返していても、互いの心の本質にはしみ込んではいかない。 生ぬるい同調(注1)など、励まし(注2)ではない。①励ますというのは、「大丈夫だよ」「いまの君のままでいいんだよ」といったことを繰り返して慰撫(注3)するようなものではない。
 心に本当に響く言葉を投げかけることだ。 『グッとくる「はげまし」言葉』(文春文庫)という本で、私は、骨太な昭和人たちの骨太な言葉をいろいろ紹介した。中身はどれも「説教(注4)」だ。胸に食い込んでくるような言葉こそが本当の励ましというものだと知ってほしがった。本質を突く言葉はきつい。強烈だ。
(中略) 昭和という時代は、大人が熱かった。生き方も熱かったし、言葉にもその熱が吹き込まれていた。
 それを考えると、しっかりと苦言を呈さなくなった(注5)大人もいけない。
 ②なにげない言葉で心が折れやすい人というのは、自分に対しての評価や批評というものを、いいものも悪いものもひっくるめて(注6)言葉のシャワーとしてふんだんに(注7)浴びてきていないところにも原因があると思う。
 本気の褒め言葉から、ほんのお世辞レベルの言葉まで、いろんな褒められ方があるものだと知っている人は、さほど簡単に舞い上がったりしない。経験則(注8)というものがあるから、現実をそれなりに正当に受け止められる。
 叱られることに対しての対応力も同じで、子供のころからきちんと怒られたり叱られたりしてきた経験があれば、ちょっとした一言にいちいち激しく落ち込まない。思い込みを増幅させて「私なんかいないほうがいいんだ.....」と屈折することもない。
 叱られ慣れていないことで、心が折れやすくなってきているのを私は実感している。親に厳しく言われたことがきっかけで罪を犯す少年少女もすくなくない。
 大人は、子供や若者に対して、本気の、親身な、熱い言葉を積極的に投げかける義務がある。褒めるときは大いに褒める。叱るべきときはきっちりと叱る。そんな当たり前のことが大事だと思う。
(注1) 同調:ある人の意見や態度に賛成すること
(注2) 励まし:元気や勇気を出すように力づけること
(注3) 慰撫:人の怒りや不安を取って、いたわること
(注4) 説教:こうするべきだと教えること
(注5) 苦言を呈する:その人のために忠告する
(注6) ひっくるめる:全体を一つにする。一つにまとめる
(注7) ふんだんに:じゅうぶんに
(注8) 経験則:実際に経験してわかった法則

(71)筆者の考える「①励ます」とはどういうことか。

(72)「②なにげない言葉で心が折れやすい人」は、何か原因でそうなったと筆者は考えているか。

(73)筆者の考えとして正しいものはどれか。

 先日友人からおもしろい話を聞いた。猫にしつけられた(注1)、というのである。飼い主が猫をしつけるのでなく、飼い主が猫にしつけられたのである。話はこうだ。
寒くなると、猫というものは一日中、暖かいストーブの前やホットカーペットの上に座っているものらしい。ある日友人は猫のごはんを作って、「ごはんよ」と呼んだ。しかし、なかなか来ない。こんなとき飼い主というものは、つい猫のところまでごはんを持っていってしまうのだそうだ。猫はホットカーペットの上にすまして座っている。飼い主は①その瞬間なにかが変わることに気づかない。
さて、翌日、「ごはんよ」と呼ぶが、猫は定位置からじっと飼い主を見るばかりだ。まだ飼い主は事態に気づかぬまま、ごはんを持っていく。ここで事は決定的になるのだが、まだ飼い主は気づかない。
気づくのは数日後。台所までごはんの催促をしにきた猫が、飼い主が用意を始めたと見るや、②サッと定位置まで戻り、ちょこんと座って待っている姿を見たときだ。つまり、冷たい台所で食べるのがいやで、何がなんでも③出前(注2)をさせるつもりなのだ。以後、飼い主は出前を続けることになったのである。

(注1)しつける:生活に必要なことができるように教えこむ
(注2)出前:料理などを注文した人の家まで運ぶこと

(7)①その瞬間とはどんな瞬間か。

(8)②サッと定位置まで戻りというのは、だれがどこに戻るのか。

(9)③出前をさせるとあるが、だれが何をさせるのか。

(1)1000円のモノを500円で買う
(2)101万円のモノを100万円で買う
 ふたつの例のうち、どちらが得とくをしているだろうか?
 1000円のモノを500円で買う。これは2倍得した(注1)ような気分になる。確かに割合にしたら50%引きだ。
 それに対して、101万円のモノを100万円で買った場合、値引きの割合はたったの1%弱で、101万円も100万円も額としてはたいして変わらないような気がする。
 しかし、心を落ち着かせてよく考えてほしい―1万円も得をしているのだ!この金額の前では、もはや500円の損得なんてどうでもいい。
 だから私は、1万円以下の買い物での很得には目をつぶり、大きな買い物に対してだけ口出しするようにしたのである。
 このように、費用の削減(注2)はパーセンテージで考えるべきものではなく、絶対額で考えるべきものなのだ。
 お金に対してこういったポリシ(注3)がない人は、高い買い物をする際に、「101万円も100万円もたいして変わらないから、お店の人の勧すすめるほうでいいや」と考えてしまう。
 家の購入(注4)や結婚式の費用などでどんどん出費が増えていくのは、こういう背景(注5)があるからだろう。お店の人も「家の購入は人生の一大イベントですから」「結婚式は一生に一度ですから」と勧めるので、なぜか「高くてもいいや」と思ってしまう。そんな人に限って、スーパーでの買い物で10円単位をケチったりする(注6)のだから①おもしろい
 こんなことをいうと、「10円単位で節約することが大切なんだ。『チリも積もれば山となる』(注7)というだろう」というお叱りを頂戴ちょうだいしそうだ。
 しかし、毎日10円を節約しても1年間で3650円である。だったら、1年で一度1万円の節約をしたほうがはるかに効果的だ。「普段はケチをしてもいいけど、たまにはパッとしたい」という人もいるが、②これはかなり危険な思想である。
 たとえば、毎日100円節約して、たまにパッと5万円を使った場合、次のようになる。  
 100(円)×365(日)- 5万(円)= △ 1万3500円
 (△はマイナスを意味する)
 残念ながら赤字である。こういう人は非常に赤字を出しやすい性質たちなので、経営者には向いていない。要は節約した気分になっているだけで会計をみていないのである。

(山田真哉 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から始める会計学』光文社)


(注1)得とくする:何かをした後、お金などが前よりも多く残る
(注2)削減さくげん:減らすこと
(住3)ポリシー:行動の基本方針ず
(注4)購入こうにゅう:買うこと
(注5)背景はいけい:後ろ、裏側
(注6)ケチる:金を出したがらない
(注7)チリも積もれば山となる:小さいものでもたくさん集まれば大きなものになる

(1)①おもしろいと言っているが、何がおもしろいのか。

(2)②これはかなり危険な思想と言っているが、なぜ危険なのか。 

(3)筆者がこの文章でいちばん言いたいことはどんなことか。

 もうひと昔前になるが、警察庁のなかに道路交通の委員会が発足し(注1)、第一回の会合に出席したことがある。そのとき事務局からの説明はこうだ。
 「近年、東京その他の大都会で道路が非常にこむようになりました。そこでこの混雑を解消するために、この委殺会を組織しました」
 そこで私は潤いてみた。
 「わかりました。では、この委員会は、どういう結果をもたらしたら成功したことになるんですか?」
 評価――ルールといってもいいが――を決めてもらわないと、どういう作業をしていいのかわからない。どんな結果になれば、成功したことになるのか、いい換えれば何を最適化すればいいのかをはっきりさせたいと思ったのである。
 しつこく聞くと、①向こうは腹を立てた。とうとう、
 「東京の道路の混雑がなくなればいいんです」
 といいだした。
 そこで私はこういった。
 「東京の道路の混雑を緩和する(注2)。これは簡単ですよ。東京から出るほうの信号機を全部青にしなさい。入るほうは全部青にしなさい。そうすれば、いったん出たら入れないんだから、東京はガラガラになって混雑はいっぺんになくなる」
 こういう話をすると、不真面目なやつだと怒る人がいるが、私はやけくそになって(注3)いったわけではない。混雑を緩和するといっても、いろいろなやり方があることを指摘した(注4)かったのだ。
 たとえばある交差点では、これまで1時間に800台しかクルマが通れなかった。それを新しいやり方にしたら1000台通れなかった。これを混雑が緩扣かんひかしたというのであれば、そのようなクルマの流れにする規制方法がある。
 また、別のやり方だってある。ある交差点からある地点まで、いままで30分かからなければ行けなかった。それを新しいやり方にしたら、15分で行けるようになった。これも混雑の緩和だと考えることができる。
 最初の方法は、進路の容量をできるだけ増やそうとするやり方。後者は旅行時間をできるだけ短縮するというやり方である。どちらのものさし、評価尺度しゃくど(注5)を使うかによって、交通規制の仕方が変わってくる。だから、まず②評価の尺度を決めることが必要なのである。
 これは重要なことである。具体的な目標とは何かをクリアにしないで(注6)、なんとなく話し合っているだけでは、結果はたいてい思わしくない(注7)。日本人は言葉を使うのがうまいが、それだけにその言葉の意味をきちんと定義ていぎしないで(注8)行動してしまうことが多いのである。

(唐津-『かけひきの科学情報をいかに使うか』PHP研究所)

 
(注1)発足:始まる
(注2)混雑を緩和する:混雑を少なくする
(注3)やけくそになって:どうでもいいと思って
(注4)指摘する:問題になることを示す
(注5)尺度:測る基準
(注6)クリアにする:はっきり示す
(注7)思わしくない:あまりよくない
(注8)定義する:ことばの意味をはっきりきめ

(1)①向こうとはだれか。

(2)②評価の尺度を決めるとはどういうことか。 

(3)筆者がこの文章で一番言いたいことはどんなことか。

 せっかく日本に来たのだからいろいろな日本料理を食べてみたいと思うが、日本レストランは高すぎてなかなか入れないと考えている外国人が多いそうです。そんな外国人に一番薦めたい店は居酒屋です。居酒屋というのは安く酒を飲むことができる店です。イリギスのパズなどと違って、居酒屋では酒だけでなくいろいろな種類の料理が楽しめます。刺身、寿司、天ぷら、焼き鳥など、日本食べ物だけでなく中国.韓国.イタリア.ベトナムの料理を出す店も多いです。ある居酒屋は 3 ヶ月に 1回メニューを変更しています。それだけ酒ではなく食べ物を重要視しているのです。だから日本に来たら、お酒が全く飲めなくても行ってみてほしい場合です。ほとんどの居酒屋には日本のレストラン独特の写真入りのメニューがあるので、それを見ていろいろ注文してみてください。写真を見て味を想像してほしいのです。もしロにあわなくても安いので許してください。中でも「枝豆」は是非食べてみてほしい食べ物です。一度食べたらきっと好きになると思います。居酒屋にはほとんどと言っていいほど枝豆がありますし、いいことに値段も安いです。さらに体にもいいのです。色々な食べ物が試せる居酒屋、一度行ったらきっとファンになると思います。

(13)居酒屋のいいところは何か。

(14)どんな人に居酒屋はいいと言っているか。

(15)本文と合っているのはどれか。

 最近、働こうとしない若者が増えているという。また、就職しても「仕事に興味が持てない」「厳しくされるのはいやだ」などの理由で、新入社員の3分の1が3年以内に会社を辞めてしまうのだそうだ。「子どもの興味のあることを伸ばし、個性を尊重する」といういわゆるゆとり教育が「興味のあることしかしない」「我慢ができない」若者を生んだ大きな原因の一つであるということだ。この話を聞いて、数年前に読んだこんな記事が頭に浮かんだ。
「縁側」という喫茶店がある。隣近所の人との接点になる縁側のような場所にしたい。そんな願いを込めて付けられた店名だ。引きこもりやニートの若者を支援しているNPO法人が運営している。引きこもる青年たちの仕事体験の場でもある。
そこに集まる青年たちは、まじめな優等生タイプが多い。その中に大学で心理学を専攻した①若者がいた。カウンセラーを目指して卒業後も勉強を続けたが、現実は甘くはなかった。それでも、「自分は特別」という思いがあり、社会に出て②普通の仕事につく気持ちにはなれなかったらしい。引きこもりの生活を何年か続け、昨年、このNPO法人を訪れた。そして、他の引きこもりの若者たちと寮で共同生活を続け、様々な仕事体験を重ねるうちに、「平凡なことの積み重ねこそ大事」、そう思えるようになったという。
「個性を尊重する」ことは大切だ。しかし、「個性的でなければ生きている意味がない」という思い込みが若者を追い詰めているとは言えないだろうか。平凡な仕事を自分には合わないと思っても我慢して続けてみる。興味がないことであっても、すぐ投げ出さない。何か失敗しても、それを自分を向上させるバネにすればいい。そうすれば、だんだん仕事の面白さが分かってくるのではないだろうか。教育の場では、社会性を養うことも大切だ。社会というものは自分の思いどおりにはならないものだが、その中で少しでも自分らしい生き方ができるような力を育てるべきだ。個性というものは、そう簡単に発揮できるものではない。

(22)①若者について、正しいものはどれか。

(23)②普通の仕事につく気持ちにはなれなかったのが変わったのはいつか。

(24)この文章で、教育について筆者が言いたいことは何か。

 本来、自由なアイディアを出しあうつもりで開いた会議なのに、いざやってみると「発言する人が少ない 」「活発な議論にならない」「伝達や報告だけで終わってしまう」といった結果になってしまう。そんな現象に誰もが覚えがあるのではないでしょうか。
 なぜこんな事になってしまうのでしょうか。本当にだれも発言することができないのでしょうか。発言や意見を白発的にしてもらうためには、何が必要なのでしょうか。①こんなとき進行役や上司が言いがちなのがこのセリフ(注1)です。「とにかく何でもいいから意見を言ってくれ」こんなふうに迫るやり方は効果的でしょうか。残念ながら、このやり方は、あまり効果を発揮する場面は多くないようです。なぜなら本当に何でも言っていいという土壌(注2)を持っている会社は稀有(けう)でしょうし、そんな会社であればこんなセリフは飛び出してくるはずもありません。「何でもいいからって、何を言えばいいんだよ。あんたが辞めるのがー番だって言ってもいいのかよ....」参加者は心の中でこんな愚痴を言う(注4)のが関の山(注5)です。その場の「目的」がく分からなければ、どう発言したらよいか分かりません。だからここでも「日的を明確にすること」は前提として必要なことです。更に発言が少ない要因をよく考えなければなりません。いろいろなケースが考えられると思いますが、「考えがまとまっていないので発言できない」「こんなこと言ったらバカだと思われるのではないか」「上手に言うと、言いだしっぺ(注6)に仕事が回ってくるし」というような心理が、発言を止めている感じはしませんか。つまり、なんらかの防衛(注7)意識が働いて、黙っている。②こういう覚えは誰にでもあるはずです。もしもそんなこと考えたことがない、という方がいたら、「独演どくえん会現象」を自ら発生させていないか、疑ったほうがいいかと思われます。
 一生懸命、防衛しているところに、更に、「意見を言え」と迫っても、ますます防御(注8)を固くするばかりです。
 不安や恐れは、人間に対して、多くの行動や発言を阻害します(注9)。結果として余計率直な発言や行動がやりづらくなるわけ。必要なのは、安全な場をつくることです。発言しても、それを受け入れてもらえるという場づくりが重要です。当然、議論には反対意見や指摘もあるでしょう。しかし、まずは一つの貴重な発言として受け入れられること。もし反対や指摘があれば、その後にすればいいのです。「一度は必ず受け取る」という習慣が、その組織にあるか無いかが、活発な議論になるからないかを左右します。

(山田豊『会議で事件を起こせ』新湖社)


(注1)セリフ:話すことば
(注2)土壌:環境
(注3)稀有:大変めずらしい、ほとんどない
(注4)愚痴を言う:言ってもしようがない文句を言う
(注5)関の山:それしかできないこと
(注6)言いだしっぺ:はじめに言い出した人
(注7)防衛:危険を防ぎ、身を守ること
(注8)防御:危険を防ぎ、身を守ること
(注9)阻害する:じゃまをする

(22)①こんなときとはどのようなときか。

(23)②こういう覚えとはどんなことか。

(24)筆者は「会議で活発な議論をする」ために、何が大切だと言っているか。

 まとめ、というのは、実際やってみると、なかなか、たいへんな作業であることがわかる。その面倒さにてこずったこ(注1)とのある人は、だんだん、整理したり、文章にまとめたりすることを敬遠する(注2)ようになる。そして、ただ、せっせと本を読む。読めば知識はふえる。材料はいよいよ多くなるが、それだけ、まとめはいっそうやつかいになる。こうして、たいへんな勉強家でありながら、ほとんどまとまった仕事を残さないという人ができる。
 もうすこし想を練らなくては、書き出すことはできない…卒業論文を書こうとしている学生などが、よ<、そう言う。ぐずぐずしていると、時間がなくなってきて、あせり出す。あせっている頭からいい考えが出てくるわけがない。
 そういうときには、
 「とにかく書いてごらんなさい」
 という助言をすることにしている。ひょっとすると、書くのを怖れる気持があるのかもしれない。それで自分に口実をもうけて、書き出すのを一日のばしにする。他方では、締切りが迫ってくるという焦燥(注3)も大きくなってくる。
 頭の中で、あれこれ考えていても、いっこうに筋道が立たない。混沌とした(注4)ままである。ことによく調べて、材料がありあまるほどあるというときほど、混乱がいちじるしい(注5)。いくらなんでもこのままで書き始めるわけには行かないから、もうすこし構想をしっかりしてというのが論文を書こうとする多くの人に共通の気持ちである。それが①(  )。
 気軽に書いてみればいい。あまり大論文を書こうと気負わない(注6)ことである。力が入ると力作(注7)にならないで、②上すべりした(注8)長編に終わってしまいがちである。いいものを書きたいと思わない人はあるまいが、思えば書けるわけではない。むしろ、そういう気持をすてた方がうまく行く。論文でなく、報告書、レポートでも同じだ。

(外山滋比古 『思考の整理学』筑摩書房)


(注1)てこずる:難しくて苦労する
(注2)敬遠する:避ける/やりたがらない
(注3)焦燥:気持ちが急ぐこと
(注4)混沌とした:混乱してはっきりしない
(注5)いちじるしい:はっきりわかる
(注6)力作:立派な作品
(注7)気負う:がんばろう、うまくやろうと思う
(注8)上すべりした:表面だけの

(25)①(  )には、どんな言葉が入るか。

(26)②上すべりした長編とはどんなものと考えられるか。

(27)これから卒業論文を書く学生に対して筆者はどんなアドバイスをすると考えられるか。