以下は、留学生の作文である。

打ち水


ロバーツ アレン


 夏休みに、友達に誘われて打ち水のイベントに参加しました。私はそのとき初めて打ち水というものを知りました。打ち水は、暑さ対策として道路や廃、玄関先などに水をまくという、日本に昔から伝わる生活の知恵です。もともとは名家庭で行うものでしたが、節電や地球温暖化対策として打ち水のイベントを企画する自治体なども(48)。
 打ち水をすると、確かに涼しく感じました。(49)気分の問題ではないかとも思いました。打ち水によって実際に気温は下がるのでしょうか。
 調べてみたら、打ち水の効果を調べた実際結果を紹介している記事がありました。その記事によると、水をまいたところの気温が2度下がったということでした。これは水の性質によるものです。水は気体になかるときに、周囲の熱を弘収します。水をまいたところの地面の熱は気体と一緒に逃げていき、気温(50)しかも、地面の温度は、水が燕発しきった後も1時間は下がったままだったとも書かれていました。
 打ち水の効果を十分に得るには、朝か夕方に日除にまくこともポイントのようです。そうすることで水がすぐに蒸発せず、温度の下がった状態が持続します。私が参加したイベントも夕方からだったので、なぜだろうと思っていましたが、(51)あったのだと知って、なるほどと思いました。
 打ち水の効果は、科学的に説明できるものでした。だから昔から今まで打ち水の文化が続
いているのだと(52)。

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 今も昔も、子供たちに親しまれている折り紙。そんな身近な折り紙が今、「折り紙工学」という学問となっ ている。一例を(48)。折り紙の「折って畳むこと」と「畳んだものを広げること」を利用した研究がある。 大きなものを小さくし、それを簡単に元の大きさに戻す方法として、折るだけで形や大きさが変えられる折 リ紙が注目されたのだ。ただ折って小さくするのなら、新聞を折り畳むように何回も折ればいい。しかしそれ では、広げるときに、畳んだ分の回数だけ開くことになる。
(49) 一気に元の大きさに戻せる折り方を開発するために研究が重ねられた。その結果何回折った後で も、折りんだ状態から両端を引つ張るだけで、元の平面に戻すことができる方法にたどり着いたのである。
 この折り方を(50)、人工衛星に用いる「太陽電池パネル」などの装置が作られている。装置を宇宙へ運 ぶロケットの容量には限界がありく、装置は小さくしなければならない。だからといって分割して部品にする と、宇宙空間で組み立てる技術が必要となる。ここに研究の成果が生かされる。開発された折り方を使えば、 装置を折り畳んで小さくすることができ、宇宙空間に出たときには簡単に(51)。
 伝統的な遊びが宇宙で使われる最新技術につながっている。子供と折り紙で遊びながらこのような科学の 話を(52)折り紙を通して、宇宙工学や技術開発の分野にも興味を持つかもしれない。

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 それまでおだやかだった人が、ちょっとしたことを(5 0 )はげしく怒り出すことがあります。まるでその人の血管が突然切れたように見えることから、カタカナで「キレる」と言うようになりました。
 だまって教室を出ようとした生徒を先生が注意したところ、突然その中学生がナイフを取り出して、先生を刺し殺す事件がありました。その事件以来「キレる若者」が社会の問題になりました。
 ところが2000年から10代の若者がキレて起こす事件数は大きく増えていないのに、50代、60代の人がキレる事件が非常に多くなりました。
 たとえば「ちょっと電車が遅れたり、眠っているお客を起こしたりしたとき、怒ってキレるのは中高年の男性です」と証言する駅員もいます。
特に、客にはあまり(5 1 )サービス業の人たち、役所の公務員などを相手に、つまらないことで何時間も大声で怒るような人が増えました。
 本来ならキレる若者を注意I 5 2 I大人が、なぜキレるのでしょうか。
 昔の老人は、長い人生で得た知識や経験を尊敬されました。現代は次々と新しい機械や技術ができて、ついていけない中高年も少なくありません。以前なら技術を教えて(53-a)若者から、教えて(5 3-b)ならなくなりました。これはつらいことでしょう。
 また会社を辞めてから、地域に話し相手もいない男性が多いのです。心の中にこういう不満やさびしさをかかえることが、中高年がキレる原因かもしれません。
人生経験のゆたかな大人(5 4 )、おだやかな人ばかりではないのです。

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 人間が考えるときは、右脳と左脳が同時に働いています。左脳は言葉や論备を、右脳は形、音などの感覚を受け持っています。(50)、考える力を高めるには、その両方をきたえる必要があります。
 歩いていると脳の働きが活発になり、いろいろな考えがわいてきます。このことは昔から経験的に知られていました。
 古代ギリシャの大哲学者ブラトンは、弟子たちに(51)といわれます。
 18世紀ドイツの哲学者力ントも、散歩する哲学者として知られています。
 彼が散歩に出るのはきっちり3時半で、夕方の6時に散歩を終えました。近所の人たちは、まったく変わらない力ントの生活を見て時計代わりに使ったといいます。
 企業におけるアイデア生産は、ほとんど室内で行われています。狭い室内に閉じこもって、言葉で「ああでもない、こうでもない」とやり合っているわけです。言葉によるアイデア生産を行っていると、論理的な左脳は活発になりますが、右脳は(52)。その結果、せっかく浮かんだアイデアも「現実的でない」と(53)に とが多くなります。
 一方、歩きながらアイデア生産を行ったら、どうなるでしょうか。
 歩くのは両手両足を動かす運動ですから、左脳にも右脳にも新鮮な血液が送られ、両方ともリフレッシュされます。歩くことに集中し始めると(54-a)の考えが弱くなり、感覚的なI(54-b)が働きやすい状態になってきます。その結果、新鮮なアイデアが浮かびやすくなるわけです。会議を始める前に、みんなで歩いてみるのはどうでしょう。

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 コミュニケーションには「聞く」「(50-a) 」という情報を中に取り入れる作業と、「話す」「I(5 0-b) という情報を外に発信する作業があります。
 その場合、特に重要なのが「聞く」という作業です。ある学者の調査によると、コミュニケーションに使われる時間は、「話す」が30%、「読む」が16%、「書く」が9%なのに対して、「聞く」は45%も使われています。それ( 5 1)、聞く練習はあまり行われない傾向があります。これは、声や音は自然に耳に入ってくるのに対して、話す’読む,書くは( 5 2 )作業になるからでしょう。
 そこで自然に音が耳に入ってくることを「聞く」、意識して聞くことを「聴く」と表しましょう。
 まず、話を聴くことによって、相手がどう考え、何を感じ、どうしようとしているかがわかります。一般的な情報も相手から得ることができます。
 その次に、相手の話を聴くことは、相手に注目すること、すなわち相手の存在を認めることを意味します。話を聴かないと逆に、相手は自分を(5 3 )感じます。
 第三に、相手との関係をよくすることができます。話をよく聴くことによって、相手と親しい関係に厂 5 4 丨、相手もこちらに好意を感じるようになるのです。
  というわけで、コミュニケーション能力をつけるには、まず「聴く技術」を身につけることが大切なのです。

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 少し前の日本の家庭には、たいてい囲碁の道具があった(50)。子どもたちは、祖父や近所のおじさんたちが遊ぶのをそばで見て、自分たちもルールを覚えて いった。だが最近は核家族が増えて、ルールを知らない若い親は子どもに教えることがなくなり、子どもたちも囲碁からは離れていった。
 囲碁は本当に強くなるためには、子どものときから始めるのが重要だそうだ。しかし、かつて1200万人とも言われた競技人口が300万人台にまで落ち込み、しかも子どもの数がとても少なくなった。囲碁にかかわる人々は、日本の囲碁の将来に(51)。
 そこへ救いの神が現れた。1998年から雑誌に囲碁がテーマのマンガが連載され、大ヒットしたのだ。マンガはテレビアニメにもなり、子ども向けに囲碁を教えるテレビ番組も放送された。このマンガを(52)として、囲碁を始めた子どもはざっと100万人と言われる。
 だが何しろ日本人は熱しやすい冷めやすい国民だ。事実、すでに新しく囲碁を始める人は(53)。
 「この機会を一時のブームで(54)」と、関係者はいろいろなアイデアを出している。

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 あなたは日本のすし屋のカウンターで、「お好み」ですしを食べたことがありますか。
 カウンターのケースの中を見ながら、好きな魚を選び、それを注文して、にぎってもらうので、いちばんおいしい状態で食べられます。ただ自分がどれくらい食べたか、金額が(50)注意が必要です。
 こ のとき、たとえば「マグロ」と注文すると、通常、マグロのすしが2つが出てきます。なぜそうなのか。江戸時代のおすしは大きかったので、2つに切って出し たなごりとか、計算しやすくするためだとか、いろいろな説があります。結局、はっきりとはわからなくて、「昔からそうなっている」としか(51)。
 と ころで、この場合、(52‐a)で行けば(52‐b)食べればいいけれど、(52‐c)で行って10個食べるとしたら、魚は5種類しか食べられません。あ る回転ずし店で、1枚の皿に違う種類のすしを1つずつ2個、乗せ始めました。これなら、食べたすしの数だけ(53)が食べられるので人気が出て、客が増え たそうです。考えたら、単純なアイデアです。でも「昔からそうなっている」ことをちょっと変えてみる、そこにお客が増えるかぎがありました。
 私たちの身の回りにも、「ちょっと変えてみたらよくなる」ことがたくさんあるかもしれません。常識(54)、頭を柔らかくしておくことが大事なのです。

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 地震のない国から日本に来た人が驚くことの1つに、テレビやラジオの緊急地震速報があります。番組の途中で突然チャイムが鳴り、「○○地方で地震で す」とアナウンスが流れます。ふつう放送から大きな揺れが来るまで数秒くらいですが、その間に火を消したりテーブルにもぐったりできます。
 その後、すぐに震源はどこか、津波の心配があるかどうかも放送されます。
 これは1995年の阪神・淡路大震災を契機に地震計が日本各地に置かれ始め、そのデータをもとに地震の情報を少しでも早く(50)、研究が始まったものです。2007年から一般人向けに放送されるようになりました。世界でも初めてのシステムです。
 でも、なぜ揺れを感じるか(51)地震や津波が来るとわかるのでしょうか。
 地震が起きると、P波と呼ばれる小さな揺れと、S波と呼ばれる大きな揺れが同時に発生します。P波は毎秒7km、S波は毎秒4kmで進みます。
 先に(52-a)が来たときに、どのくらい後に(52-b)が来るか予測して、緊急地震速報が発表されるのです。いくつかの地点のP波とS波の時間差を見ると、震源がどこかもわかります。
 海底にもたくさん地震計が置かれ、地震波を観測するとデータを衛星に送ります。地震波は海の波より100倍速く着くので、津波が来るかどうか(53)。
 2004年のスマトラ島沖地震でこのシステムがあったら、多くの人の命が助かったことでしょう。今や津波は「tsunami」と、世界でそのまま通じる言葉になりました。津波情報も国境を越えて発信する必要があります。
 緊急地震速報もまだまだ不完全ですが、地震の多い日本(54)の発明と言えるでしょう。

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 最近の日本の夏の暑さには異常な(50)。
 以前は体に悪いと言われたエアコンも、今では使わないと命が(51)。
 しかしエアコンをつけると熱い空気が外に吹き出て外の空気があたたまり、日が落ちても地面の温度が下がらず、夜も暑いままです。エアコンを使うことが、夏をますます(52)とも言えます。
 最近街を歩いていて、窓の外やベランダー面にひもがつるされたり棒が立てられていて、下に植えた植物の葉が茂っているのを見かけませんか。あれを「緑のカーテン」と言います。
 人間が暑いと汗をかくように、植物も暑くなると根から水を吸い、葉の表面が汗をかいたようにぬれます。(53-a)葉の間を空気が通ると、(53-b)葉の間を通るよりたくさんの熱を奪います。そのために空気の温度が下がります。
 エアコンのない小学校で「緑のカーテン」を作ったところ、今まで暑くて勉強できなかった窓際の生徒たちも、落ち着いて勉強できるようになりました。
 電気代もかからないし、外の地面をあたためることもありません。緑色は勉強で疲れた目を休めるし、実のなる植物なら実を給食に使うこともあるそうです。電気代の節約(54)、見た目にも美しく食べることもできると、よいことばかりです。
 市役所が住民に「ぜひ緑のカーテンを作ってください」と呼びかけているところもあります。地球温暖化を食い止めるためにも、広がってほしいものです。

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 現代は科学の時代(50)、占いの好きな人は多い。朝のテレビ番組では、必ずといっていいほど、「今日の運勢」を取り上げているし、女性向けの雑誌の新年号は、「今年のあなたの運命」という特集を(51)作れない。
 実は大会社の社長や政治家にも占い師に頼る人が少なくない。
 占いが科学的に正しいかどうかはわからない。しかし占い師はたくさんの人を見てきている。顔だけで「この人はどんな人か。何に悩んでいるか」とわかるのではないか。相談する人も悩みを(52)だけで心が軽くなるものだ。
 また、ある人が「こんな仕事を始めたいんだが」と相談して、占い師が「最初は苦労するけれど、かならず成功すると占いに出ています」と答えたとする。
 たとえば、3年やってなかなか成功せず(53)、「占い師が『最初は苦労する』と言ってたな」と思い直して、その後さらに10年がんばって成功するかもしれない。
 生まれた日や名前や血液型で運命が(54)。だが占いをうまく使えば、迷ったときに背中を押してくれたり、心を支えてくれるものになるのだ。

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